ウメハラとちきりんの夢コラボ!深い議論が繰り広げられる「悩みどころと逃げどころ」
対極とも思える二人だし、むしろ梅原の方が常識的意見
言わすと知れた日本初のプロゲーマー「ウメハラ」こと梅原大吾さんと、言わずと知れた人気社会派ブロガー「ちきりん」さんの対談本です。
どっちもファンやから単純にうれしー!この二人の会話ってどうなるの?って感じです。
「ウメハラ」さんはストリートファイターシリーズを中心に活動されているプロゲーマーです。
その記録はギネスにもなっています。
かたや「ちきりん」さんはブログ「Chikirinの日記」が大人気のブロガーです。
名門校からのアメリカ大学院からの外資系というまさにエリート街道。
学校に行く必要はあるのか?
最初の話題が「学校は行く意味があるか?」なんですが、二人をよく知らない人だとウメハラさんが「行く意味ない」でちきりんさんが「行った方が良い」になりそうですよね。
それが本文だとちきりんさんが「学校で勉強する人ほど損をする」と提言し、ウメハラさんが「随分極端な意見ですね。行かないと損すると思いますよ」という返しなんです。
学校は本来「自分のアタマで考える力」を養う場所なのに、「とにかくこれをやれ」「言うことさえ聞けば良い」と無思考である事を勧めます。
でも現代では、40歳になっていきなりハシゴを外されるというのが起きている。むしろ真面目に学校の教えを守ってきた人ほどその傾向が強いという事なんです。
ウメハラさんの意見としては、「自身は学校で学んできた事は現在何も役に立っていないの前に、何も得ていないというのは事実としてある。
それでも今平気でいられるのは、幸運にもプロゲーマーとしてやっていけてるからである」と。
この分野なら誰にも負けない自負もあるし、努力もしたし、適性もあった。
しかもたまたまプロゲーマーという職業が成り立つタイミングでもあった。
「しかし、そのどれが一つでも欠けていたらプロゲーマーになれていないし、「もっと真面目に勉強しておけばよかった」となっていたと思う」
「勉強しなくていいのか」については子供の頃からずっと不安であったと。
それにウメハラさんは学歴は大切だと言います。ちきりんさんは驚きますが、ウメハラさん曰く、「それは学歴があるから気付かないだけ」
確かにそうかも。持ってるからわからないんですよね。
ちきりんさんは名門校出身でも厳しくされたよ?と言いますが、ウメハラさんは「厳しいと見下されるは全然違う」と言います。
「実力社会の時代です」なんて綺麗事は言えない。
でもまだ二人の議論は続きます。面白い!
ちきりん「ウメハラさんは勉強しないとこんな悲惨な人生になるから、というけど、私が見てきたのは、ちゃんと勉強したのにこんな悲惨なことになるなんて、って人達なんです」
だから、大学さえ出ておけばなんとかなる、は明らかに有害である。奨学金という借金までして行く価値は無い、と。
ウメハラ「学校が行く価値ない、と言えるのは頭が良い人か、猛烈に好きな事、やりたい事がある人です。明らかに得意なことや、やる気がある人も行く必要はないでしょう。
でも、そうじゃない人は、とりあえず学校行っておけば、最低限、惨めな思いはしない」
ちきりん「それって、能力や取り柄がない人は、とりあえず学校行っとけってことでしょ?めちゃくちゃ上から目線です」
ウメハラ「でも…しょうがないんです。それを言わなかったら偽善になってしまう」
ちきりん「教育って本来は、環境に恵まれない人にリカバリーのチャンスを与えるものなのに、今はそれと反対の事が起きている。だからとりあえず大学までは出ておいた方がいいとは全然思えない」
アツい!アツい議論ですね。
プロの世界は厳しいです。日本のプロ格闘ゲーマーでまともに食べていけるのは一握り。
それを考えると、軽々しく「俺、ゲームそこそこ上手いし、プロゲーマーにでもなるかー」とか考えてたらひどい人生になるぞ、とウメハラさんは警鐘を鳴らしているのです。
ここにウメハラさんの責任感を感じます。お金を出してまでこの本を読んでる人に、気軽に「好きな事で生きていこう!」なんて絶対に言わない。
それでも「いや、俺はやるんだ!」と来る奴は応援する。
逆にちきりんさんはくすぶってる人達を見てきたので、「飛び出そうぜ!」と煽る事が、きっかけを与える事が自分の責任だと思っている。
この本ではこの「学歴」のほかに競争、目的、評価、人生、職業、挫折、収入、未来について各項で対談されてます。
ここでは学歴、評価について掘り下げます。
他の項目は是非本にて。めっちゃ面白いよ。
二人の人生論とは
勝負の駆け引きって論理より発想みたいに思われがちですが、ウメハラさんって論理思考がとても優れてると思うんです。
この動画とか見てもらうと分かると思います。
そして、ちきりんさんはウメハラさんにかなり鋭角に突き刺さる質問をしてするんですよね!
これが読んでいて気持ちいい。
そんな二人が「良い人生とは?」についても語り合います。
ウメハラ「結論から言うとめちゃくちゃいい人生だと思っています。でもそれは成功したからじゃない」
ちきりん「それホント?」
ウメハラ「ホントですよ。アラブにも時々行くんですけど、あの辺のすごいお金持ちって全然楽しそうだとも幸せそうだとも思わない。
僕が生きる喜びを感じられるのは、考えたり努力したり、成長する機会が得られるからです。
そういう状況が楽しさの源だから、大成功して「毎日遊んで暮らして下さい」って言われたら、全く良い人生じゃない。
今はちょっとでも立ち止まったらすぐにヤバくなる緊張感がある。だから良い人生と思えるんです」
ちきりん「そんな人生、私だったら疲れてしまいます。私は何か目標があったら、達成するのに最小限の努力しかしたくない。そんなに強く成長したいって思ったこともない」
ウメハラ「反対に成長なんてどうでもいいって言ってるちきりんさんは、いい人生ですか?」
ちきりん「うん、私もめちゃくちゃ良い人生だったと思います。私が一番好きなのは世の中ウオッチなんです。だから社会派ブロガーというポジションはめちゃくちゃ楽しい」
ちきりん「ところで、私たちはどっちもやりたい事やれてるから「いい人生」だと思ってるでしょ?
ってことは、やりたい事をやれないと、良い人生は手に入らないのかな?」
ウメハラ「そんなことはないでしょう。もちろん一度の人生、やりたい事やれたら素晴らしいです。でも世の中にはやりたい事を選べなかった人もいれば、やってみたけど上手くいかなかった人もいる。でもその人たちも「いい人生」を送れてる人はたくさんいる」
いい人生だったと言える条件。ここでは
「自分で人生を決めたという納得感がある事」
と、定義づけられました。
「家族のため」とかという言葉を唱えると、思考停止に逃げ込めるのも事実です。
でも自分と向き合うのを避けていると、どこかでツケが回ってきます。
先送りにすればするほど、向き合う時には年を取っており、「今頃気付いても遅いよ、人生無駄にしちまったな」てことになりかねない。
社会的評価は励みになるけどゴールにはならない。結局のところ「いい人生」って言えるのは自分自身でしかないんですね。
ちきりん「なんだけど、その「自分で評価すればいいんだ」ってのも、勝ち組だからこそ言えるんじゃない?」
ウメハラ「そうですね。うん、やっぱりこれは「勝ち組の人生論」でしょう」
ちきりん「気持ちがいいほどの上から目線」
ウメハラ「うん、だから僕としては「俺たち勝ってるから言わせてもらうよ。でもこれは成功するずっと前から考えていたことだからな」って」
このトーク、最高ですね!
同じく東大出身のプロゲーマーときどさんの著書もチェックしてくださいね!
「悩みどころと逃げどころ」を読んでやってみた
これ本で読んでるとリズミカルな会話に見えて、実際どんな感じの対談だったのだろうと、動画も見ましたが実際リズミカルなんですね。
全く別の立ち位置ながら、意見も全然真っ向勝負ながらもこのリズムとは。
お互いに敬意と、普段からの深い思慮がないと出来ませんね、これ。
最近自分も「好きなことをやっていこう」系の考えで行動していたこともあり、一旦自分の立ち位置を確認する絶好のタイミングでのこの本でした。
お二人とも各分野で成功され、「好きなことをやろう」を体現されてきました。
そして少なからず影響を受けてやってきた身としては、意外な意見も多く面白いものでした。
自分の器って成長の限界ではないということがわかりました。
ここが自分にとってのフィールドであり、その中で頑張れば良いんだと確信できたら、そここそが自分の器なんですね。
それは頭で考えたり想像するだけではダメで、実際にあれやこれやと試して行動した上で腑に落ちるという感覚です。
頭で考えてるだけでは、「もっと別の分野だと出来たのでは?」とずっと人生に満足できない状態になります。
「好きなこと」というのは人に評価されて初めて好きなことになるのかも。
ウメハラさんほどのストイックな好き度合いは正直ありませんが、これからもこのスタンスでやっていこうと思います。
本の最後に載ってる後日談というか、裏側の話がめちゃくちゃ面白いので是非読んで!
著者 ちきりん 梅原大吾
出版社 小学館