神様とお仕事できるっていいなあ「手塚治虫アシスタントの食卓」
好きなことを仕事、とにかく熱量がスゴイ
手塚治虫先生がすごい…。僕が今更言うまでも無いですがスゴイ。
手塚治虫先生は1989年に癌で亡くなられる直前まで漫画を描き続け、作品化されたのはなんと604作…!
生涯で15万枚もの漫画原稿を描かれました。
連載も同時に7本だったそうです。
睡眠時間も3時間ほどで、食事も漫画を描きながら片手間に摂ってたそう。
スピードアップの為、下書きなしでアタリだけとっていきなりペンで描かれてたそうです。
伝説として知ってはいましたが、改めて聞くと凄いなあ…。
もちろん時代のパイオニアであられたので、数々の功績も成されました。
まず、ストーリー漫画を確立されました。それまでは漫画は4コマであったりしたのですが、ストーリーはあって無いようなもの。
そのストーリー性はその後の漫画界に大きな影響を与えました。
アニメを世の中に広めたのも手塚先生です。
その情熱は凄まじく、稼いだお金を全て注ぎ込み、会社が傾くレベルです。
この時の手塚レベルが標準基準になってしまったので、今日のアニメーターの厳しい環境が決まってしまったとの話もあるぐらいです。
そしてアシスタント制を導入したのも手塚先生が初めてです。
この本は著者の堀田あきおさんが、そんなアイスタント時代の思い出を当時の食事と絡めて描かれたエッセイ漫画です。
当時の手塚先生とのアツい仕事風景がリアルに伝わってきて面白かったです!
1日のいつから仕事が始まるかわからない
当時は手塚プロダクションは高田馬場にあるビルの4階が手塚先生の仕事場で、2階がアシスタントさんの仕事場でした。
勤務時間は基本9時半から18時。
でも寝る間も惜しんで仕事をする先生には昼も夜もありません。
日替わりでアシスタントさん達は残って、いつ先生から仕上がった原稿が来ても良いようにスタンバッておくのです。
夜勤は社員プラス漫画で食べれてないOB達も声を掛けられて助っ人にやってくるんです。
そして部屋の奥では、いつ上がるかもわからない原稿を待ち続ける編集者たち。
何本もの連載を抱えてるんですから、その本数分の担当者もいるんです。
そしてみんなで先生からの「原稿上がったよ」の内線を待ち続けるのです。
そんな夜勤のお楽しみが、深夜12時から13時の食事の時間です。
同じビルにある小料理屋さんに行くのが多かったそうです。
なんでも好きなものを食べて良くて、なんと全て会社もち。いいなあ。
これは「ちゃんとアシスタントには食べさせたい」と言う先生の意向が反映されてたんですって。
アシスタントもOBも普段はろくなものを食ってないので、ここぞと美味しいものを注文します。
生牡蠣、さんま、肉じゃが…。
シメは出汁のきいた高級お茶漬け。ああ、食べたい…。
ベテランのアシさんも「先生、今日は寝ちゃったんじゃないかなー」とか言ってます。
そして午前1時に帰社。机には先生の原稿が置かれてました。
もちろん手塚先生は仕事場に戻って続きの作業中。努力量が…。
スゴイ世界やなあと感心しますね。
ほんといつ寝てるんだ?と言いたい
「ブラックジャック」が週刊連載されていた頃、手塚先生は他に「未来人カオス」「火の鳥」「ブッダ」「ユニコ」「どついたれ」などなど多くの連載を抱えてました。なんとひと月に120ページ以上!
そして毎日毎晩担当編集者達は、先生の原稿が上がるのをただひたすら待っているのです。
堀田さんも「神様はこの上で描いてるんだなー」とかメルヘン妄想。
そしてとうとう先生から内線。堀田さんは4階の先生の仕事部屋に原稿を取りに行きます。
緊張しながら扉をノック。
「はい、ごくろうさまー」
扉を開けると中からは、パンイチの先生が飛び出してきます。
そして先生は猛烈なスピードでアシスタントの作業の指示をしていきます。
背景の参考資料も用意されています。
戻ってアシスタント達も作業開始。
出来上がった3ページ分の作業は1時間ほどで終わり、アシさんも担当者もまた待ち時間が始まります。
ベテランのアシさんも「もう朝まで無いと思うから、仮眠取れば?」
そんな朝5時、内線は再び鳴るのです。すげえ。
朝9時半には日勤の人たちがやってきます。
「昨日最後出たの何時?」「5時ごろですね」「じゃまだ先生寝てるかな」
そこで喫茶店に出前の電話。
なんと夜勤には夜食と翌朝の朝食も付いているのです。
先生もアシさんも好きなことを仕事にしてるんやなあと読んでてほんとわかります。
先生の可愛い人柄もわかります
手塚プロには多くの見学者も来てました。
当時の手塚プロには先生のお父さんの部屋もあり、お父さんが案内などもされてたそうです。
ある日も小学生達が見学にやってきました。
スタジオをキャッキャ言いながら見て回っていたところに、何も知らない先生がやって来てばったり。
頭もボサボサ、服も部屋着でした。アッと気付いて慌てて出ていきます。
しばらくすると先生がピシッとジャケットを着て、トレードマークのベレー帽も被りやってきました。
ヒゲもきっちり剃っています。
ファンの子供達にヨレヨレの姿を見せたくなかったんですね。
ファンを大切にしている先生らしいエピソードです。
他にもあったかエピソードはありますよ。
先輩アシスタントが独立する為、辞めることになった日。
社員さんやアシスタントさん達で飲み会を開催していました。
食事も始まり盛り上がったところで、ドタドタと走ってくる足音が聞こえてきました。
「やあ!」
豪快に笑いながら手塚先生が入ってきました。
みんなもびっくりしています。辞める先輩も「まさか先生も来てくださるなんて!」とびっくりしてます。
超多忙な先生ですが、こういった場所にはなんとか時間をこじ開けて、できる限り出席しようとしてくれるんですって。
先生はサービス精神も旺盛なのです。
先輩も先生に酌をしてもらい感動しています。
そしてなんと先生は2次会にも付き合ってくれます。
先生がオシャレなバーにみんなを連れて行ってくれます。
そして先生はピアノの演奏を餞別のプレゼントに弾いてくださったのです。
モーツァルトに始まり、鉄腕アトムの主題歌にアトムのアレンジバージョンまで。
仕事場でも見たことのない素敵な笑顔で演奏されたのです。
「手塚治虫アシスタントの食卓」を読んでやってみた
天才は努力をするから天才なんやなあ
先生がほんとすごいので身が引き締まる思いです。
天才ってみんなが努力と思っているものを努力と思っていないんですね。
ほんま朝から晩まで、作業を黙々とこなしています。
これは宮崎駿監督も西野さんもGacktもみんなそうなんです。尊敬してる人みんなそう。
そんな人たちに近付こうと思ったら、同じように活動量を持たないと話にならないなと思いました。
でもさっきも書いたように、努力と思っているうちはダメんです。それは好きなものじゃないって事ですよね。
好きならやるなと言われてもやるような感じ。
楽しくて楽しくてしょうがない。
僕だとこのブログはまあ楽しいかな?iPadでイラストを描くのは時間を忘れてはできるかなってレベルです。
もっと突き詰めたら楽しくてしょうがなくなるのかなあ。
もっと作業にのめり込みます!
先生のエピソードは感心するものばかりです。
是非読んで心に手塚治虫をインストールし、夢中で何かやってみて下さいね!
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日本が誇るアニメ界の天才、宮崎駿と高畑勲。
手塚先生に肩を並べる天才ってこの人たちしかいません。
しかし、天才ってほんと変わってますね…。
著書名 手塚治虫アシスタントの食卓 (ぶんか社グルメコミックス)
著者 堀田あきお&かよ
出版社 ぶんか社