ゲームの企画書

 

「ゲームの企画書」名作ゲームからクリエイティブの秘密を探ろう!

伝説のゲームを創った伝説のクリエイターたち

 

この本を読むと得られるもの

新しいものを創り出す発想の仕方がわかります。

ユーザー目線でのものづくりについて学べます。

ゲームをさらに楽しめるようになれます。

 

いやあ、迷いました。

この本は伝説のゲームを創ったクリエイターたちへのインタビューが収められているのですが、ほんとすごい人ばかりなんです。

いつもこのブログは本の一部を要約紹介して、本に興味を持ってもらえたらというコンセプトでやってます。

しかし伝説のクリエイター揃いなので、すごい人を紹介したい反面、ネタバレが過ぎるのでは?と心配になるレベル。

誰を紹介すればいいのか…。

 

収録されてるインタビューは

第一章

「ゼビウス」遠藤雅伸さん×「ポケモン」の生みの親・田尻智さん×「ポケモン」のキャラデザイン・杉森健さん

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ナムコ

 

第二章

「桃太郎電鉄」さくまあきらさん×「天外魔境2」「俺の屍を超えてゆけ」桝田省治さん

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コナミデジタルエンタテインメント

 

第三章

「ドラゴンクエスト」「シレン」中村光一さん×「シレン」プロデューサー長畑成一郎さん

 

第四章

「コーエーテクモCEO」シブサワ・コウ=襟川陽一さん×「コーエーテクモ会長」襟川恵子さん×「KADOKAWA相談役」コンプティーク創刊佐藤辰男さん

 

こんなラインナップです。うおお、ゲーマーからすると正直選べないレベル。

僕が世界で一番好きなクリエイターが桝田省治さんなんですよね…。でもドラゴンクエストはまさに青春。中村光一さんは神です。

日本のゲーム界の祖とも言える遠藤さんと田尻さんの対談とかやばいし、コーエーの歴史にも興味があります。

実際どの対談もクソ面白い!

 

迷った結果、ゲーム業界の「トキワ荘」とも言える遠藤さんと田尻さん、杉森さんの章にしました!

他の章もケタ違いの面白さです。是非本も読んでくださいね。

伝説のアーケードゲーム「ゼビウス」

ゲームセンターがSNSだった時代

出典:Replay Burnersさん

ゼビウスは1983年に稼働を開始した伝説のゲームです。

このゼビウスというゲームが巻き起こした現象は、今で言う SNSみたいなものです。

 

かつてゲームセンターが若者のたまり場になっていた時代。

日本各地のゲームセンターで常連を中心としたコミュニティが生まれていました。

これからは絆が価値を生む!SHOWROOM前田祐二さんの「人生の勝算」

 

ゼビウスは当時のゲーマーの心をわし摑みです。

まるで意思を持っているかのように襲ってくる敵。何度プレイしても飽きないゲームデザイン。

当時のゲームの水準ではありえないクオリティで、デーマー達は熱狂したのです。

 

僕は残念ながら当時の熱狂を体験していませんが、漫画「ドラゴンクエストでの道」で、堀井雄二さんと中村光一さんとすぎやまこういちさんがメチャメチャアツく語るシーンがあったので知ってました。

やっぱりみんなハマりまくったんやなあ。

 

僕はレトロゲームが大好きなんで、関連書籍を集めるのも趣味なのです。

この本もめちゃくちゃ面白かったですよ。

 

さて、話がそれましたが、ゼビウスにはもう一つ逸話があります。

当時は色々な裏技や噂話がゲーマーの間で飛び交っていました。

中でも物議を醸し出したのが、ある条件を満たすと「ゼビウス星」に行けるという噂話でした。

 

しかしこれはデマでした。その為この噂を検証しようと調べていた青年が、むしろデマを広げるのに貢献していると、遠藤さんに激昂されてしまったのです。

当時のことを青年は「僕は宣教師から詐欺師になった。非難され、ゲームセンターに足を運ぶと、仲間だったやつでされ、後ろ指を差した」と書き残しています。

 

製作者と熱心なファンによるコミュニティ

ところがある日、意思消沈してゼビウスを遊ぶ青年のもとに遠藤さんが現れます。

青年に「君は謝らなくていい」と語りかけ、ゲームセンターに集まってた若者たちを呼び集めました。

そして仲直りの仲介をしてくれたのです。

 

このゼビウス星の文章を書いた青年こそ、田尻智さんで、のちにゲームを制作する側に回ったのです。

そうして彼が杉森さんなど仲間と開発したゲームこそが「ポケットモンスター」なんです。

 

田尻さんと杉森さんの出会いは高校生の頃でした。

当時田尻さんは「ゲームフリーク」というゲーム同人誌を創ってらっしゃいました。

その第一号がゼビウス特集だったのです。杉森さんはその同人誌を見て内容の濃さに驚愕します。

それで早速ゲームフリークに手紙を書かれたそうです(当時はメールがありません)。

 

杉森さんも相当なゲーマーなので、田尻さんも「一体何者だ」と思ってたそうです。

都内のゲームセンターではそうしたコミュニティで口コミが広がっていく文化でした。

あとそれに、ゲーセンノートの存在も大きかったそうです。

 

ゲーセンノートとはゲームセンターに置かれている交流用のノートです。掲示板に近い存在。

そのノートが流行り出すきっかけになったゲームがありました。

異様にたくさんの謎が盛り込まれて、絶対に一人では攻略できないようなゲームです。

(アイテムの出し方が「フロア9の最上段の左から9ブロック目と10ブロック目の中心をそれぞれ通過する」とか極悪なもの。しかもこのアイテムは取ると不利になる笑)

 

そのタイトルは「ドルアーガの塔」。これもなんと遠藤さんの作ったゲームなんです。

これは当時のゲーセン文化を前提にして作られました。

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ハピネット ピーエム

「あれは、明らかにゲーマー同士の口コミでの伝播を想定したゲームなんですよ。

前に「ひぐらしのなく頃に」が、ネットでの謎解きの議論がなければ成立しなかったという話がありましたが、当時の僕は、まさにゲーセンノートを使ってそれをやろうと考えたんです」

遠藤さんの仕掛けってめっちゃ斬新ですよね。当時のゲーマーは楽しかっただろうなあ。

 

これぞまさに「場の体験」です。筐体のメンテナンスが酷いのも、不良に絡まれるのも、そういうのも全部ひっくるめて、「ゲームセンター」という体験だったのです。

言葉と文化を超えて世界に広がる「オタク経済圏創世記」がアツい!

 

ゼビウスはどのように企画されたのか

ゼビウスはセンスが凄まじい

ゼビウスは謎に満ちているのが魅力の一つでした。

ナスカの地上絵みたいなのが現れたりと、当時のゲーマーが夢中になるギミックが満載です。

 

ロゴもコードネームの「V10」を真ん中に入れたものなんですが、田尻さんがゲームを作り始めた時に、ゼビウスのこういうセンスの凄まじさを痛感したそうです。

ドット絵も、今見ても全く古く感じないオシャレさ。強烈な表現力が80年代にすでにあったことに驚きです。

 

バキュラも形状としては長方形が8コマ回しで台形に変化して言ってるのを繰り返しているだけです。

そこに一番明るい時は白く飛んでて、スペキュラーに技術も取り入れています。

当時は誰も追従できないレベルです。

 

新しい謎を知るたびに遊びたくなる

田尻さんにとってゼビウスの最大の魅力は「謎」だったそうです。

例えばゲームを始めてすぐに画面右端を撃つと隠しメッセージが出てきます。こういうのも後で知るとまた遊びたくなる。

そういう仕掛けが何重にもあって、謎が深まり、心に残っていきます。

 

ゼビウスという名前は当時のエライさんが思い付きでつけた名前です。

ナスカの地上絵を入れようと言ったのも、当時話題になっていた惑星直列「グランドクロス」と入れようよ言ったのもエライさん。

遠藤さんは「どうやって取り入れるんだよ!」と思いつつ、それらに全て「わかりました」と答えます。

 

それらを全て世界観やギミックに取り入れていきます。

厨二病的な解釈をどんどん盛り込むのです。

それをストーリーとして公開していきます。

そして意図しないバグなどで設定にそぐわないものが出た時は「いや、あれは違うんだよねえ」とボソッと言うのです笑。

そこからまた噂が広がり盛り上がります。

 

また言語学から学んだこととして、名前の定義があります。

もしライオンに名前がなかったら「立髪のある、鋭いきばの動物」と表現するしかなくて、ただ不気味で怖くなります。

しかし、一度名前が付くと、意味不明な怖さは消える。名前が付くと、本質的に秘めている危機を理解できるようになるのです。

 

なので、名前にはメチャメチャこだわって付けてあります。

ほとんど言語を丸ごと一つ作ったレベルです。「ゼビ」は4を意味し、「ウス」は星。ゼビウスは「第4惑星」です。

「ガル」は大きいという意味になったので、大きいものには全て「ガル」が含まれます。

そうすると奇妙な響きにも一貫性が生まれ、何か「神話性」のようなものが生じます。

意味不明だった名前にも徹底的にこだわった意味づけがされたのです。

すっごい作り込み。

 

ゲームフリークスにも引き継がれたイズム

田尻さんは以前、チームのメンバーに「ゲームで一番良いアイデアというのは、コストがかからないで、面白くなるものだ」と言ったそうです。

あるメンバーが、グラフィックコストばかり増えるアイデアを持ち込んだときの事。

田尻さんにひどく怒られたそうです。

 

その時田尻さんが例に出されたのがセガ版の「テトリス」です。

テトリスは元々、上から落ちてきたブロックが下にくっついた時点で固定される仕様でした。

 

そこにセガは設置にタイムラグを設けて、設置してからも一瞬動かせるようにしたのです。

その簡単なアイデアがゲーム性が爆発的に飛躍しました。

良いアイデアというのは、こういう小さな工夫でゲーム性を一気に高めるものを言うのです。

 

今、日本の若造は「日本のゲームは遅れている」と言います。海外の技術力がすごいからです。

しかし、遠藤さんは「海外に比較して30年は進んでいる」と仰います。

これは文化の違いとも言えます。

 

日本のゲームが「コンセプトドリブン」なのに対し、海外のゲームは「テクノロジードリブン」であると言われています。

海外では技術が先にありきで、それをどう使おうかという発想で考えるんです。

日本では表現したいものが先にありきで、それを表現するためにピンポイントで技術を使います。

”面白い”はコンセプトで決まる!「成功はすべてコンセプトから始まる」

 

そこを現在、遠藤さんは認知科学などからも引用して体系化させる取り組みをされてます。

そこには言語の文化も多分に影響しているようです。

物事をシンボル化していく能力に長けた日本人に対し、アルファベット文化の人たちはスバリそのものを見せたがる傾向にある。

そういう日本のゲーム制作を工学的に解析して、メソッドも確立化したいそうです。

 

当時遠藤さんは若者からも色々話を聞く機会を作ってらっしゃいました。

ゲームフリークスを立ち上げた田尻さんを始め、開発会社の社長やメディアなど、多くの人が今や各方面で活躍されています。

言わば「ゲーム業界のトキワ荘」のようなものでした。

好きで集まって、それぞれが極めていって業界を牽引するようになったのです。

神様とお仕事できるっていいなあ「手塚治虫アシスタントの食卓」

 

ゼビウスの伝説からポケモンへの伝説へと受け継がれる。

田尻さんはやはりゼビウスを体験したことが大きいと仰います。

 

「ゲームの企画書」読んでやってみた

クリエイティブということ

ゼビウスも、ポケモンも細部へのこだわりが尋常ではありません。

まさに「ブランドは細部に宿る」です。

 

遠藤さんの先見性も凄いし、それに影響を受けた世代の熱量もハンパないなと思いました。

まさにトキワ荘とかぶる黎明期の熱気とエネルギーを感じます。

 

またエンターテイメントとは?を学べましたね。

もう現代はモノを売る時代ではありません。モノは溢れて全てのモノはコモディティ化しました。

今はエンターテインメントとも言える体験を売る時代であると思っています。

 

それは店舗だけでなく、オンラインも同じです。

いかに熱狂を生み、コミュニティを形成し、ファンと製作者の繋がりを生み出すか。

そしてファン同士の交流を生み出すか。

 

そこをデザインしないと今後生き残れないなと思うわけです。

 

他の章もモノを生み出す楽しさ、いかに消費者に楽しんでもらうかのマインドが溢れています。

全ての仕事に活かせる話だと思います。

この本はシリーズ化もされています。

また別の本も紹介したいと思います。是非読んでみてくださいね。

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「ゲームの企画書2」新しいジャンルを創造した神クリエイターたち

次は鈴木裕さんの登場です!

 

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著書名 ゲームの企画書(1) どんな子供でも遊べなければならない (角川新書)

著者 電ファミニコゲーマー編集部

出版社 KADOKAWA