「人工知能は人間を超えるか」ディープラーニングって何なの?人工知能と会話できる未来
遠い存在だったAIがずいぶん理解出来ました!
この本を読むと得られるもの
- ディープラーニングの仕組みがわかります
- AIが今後どのように進化するのかわかります
- AIの発達によって私たちの仕事はどう変わるのか予想できます
過去には2回の人工知能ブームが来ました。
評価が先行し、みんなが湧き上がりました。
しかし、期待ほどの技術の発展はなく行き詰まり、世間はそっぽを向きました。
そして現在来たる3回目の人工知能ブーム!
今回は「ディープラーニング」をひっさげての登場です。
人工知能の現状はこんな感じです。
- 上手くいけば、AIは急速に進展する。なぜならディープラーニングが開拓されたからだ。もしかすると、数年のうちにAIが多くの場所で使われ、大きなインパクトをもたらすかもしれない
- 一方、冷静に見ると、AIに出来ることは現状ではまだ限られている。基本的には決められた処理を決められたように行う事しかできない。例外に弱く、汎用性や柔軟性に欠ける。
上限値と期待値に結構な差がありますね。
宝くじを買って、1等が当たる気になってるような状況です。
もちろん宝くじより買う価値はあるので、「大きな飛躍」に期待しましょう。
この本では、
- 広がる人工知能。人工知能は人類を滅ぼすか
- 人工知能とは何か。専門家と世間の認識のズレ
- 「推論」と「探索」の時代。第一次AIブーム
- 「知能」を入れると賢くなる。第二次AIブーム
- 「機械学習」の静かな広がり。第三次AIブーム
- 静寂を破る「ディープラーニング」。第三次AIブーム
- 人工知能は人間を超えるか。ディープラーニングの先にあるもの
- 変わりゆく世界。産業、社会への影響
の項目で深くAIについて書かれています。
ここでは、気になる第三次AIブームを中心に要約してみます。
もっと深くAIについて知りたい人は是非本を読んでみて下さいね。
ディープラーニングが未来を切り開くぜ
2012年、人工知能研究業界に衝撃が走ります。
世界的な仮想認識のコンペティションで、東京大学、オックスフォード大学、イェーナ大学、ゼロックスなどの名門研究機関を抑えて、初参加のカナダのトロント大学が圧倒的な勝利を飾ったのです。
この大会では、画像認識の正確さを競います。
それまでは機械学習の際に用いる特徴量の設計は人間の仕事でした。
各研究機関は、エラー率を下げるために画像のどこに注目させるか試行錯誤を繰り返したのです。
もうここは地道な職人技の世界です。
1年かけてようやく1%下がるという世界。
その年もエラー率26%台の熱い攻防が繰り広げられるはずでした。
そんな中、トロント大学はいきなり15%台を叩き出したのです。
もう別次元。もちろん各国の研究者たちは驚きたまげます。
トロント大学の勝利の要因こそが、同大学教授ジェフリー・ヒントンが中心になって開発した「ディープラーニング」だったのです。
ディープラーニングの研究自体は2006年ごろから始まっています。
それでもいきなりトップに躍り出たのだから、大変な騒ぎでした。
ディープラーニングは、データをもとにコンピュータが自ら特徴量を作り出します。
ディープラーニングによって、これまで人間が介在しなければならなかった領域に、人工知能が踏み込んだのです。
これまでのAIの進化はマイナーチェンジクラスでしかありませんでした。
しかしディープラーニングは革新的な大発明だったのです。
とはいえ、ディープラーニングによって人工知能が実現するというのは短絡的なんですって。
まだまだ足りないところだらけです。
しかしディープラーニングがブレークスルーのきっかけになるかどうかは大注目です。
ディープラーニングとは、多階層のニューラルネットワークです。
ニューラルネットワークとは、人間の脳を模した数理モデルです。
人間の脳には千数百億もの神経細胞(ニューロン)があり、このニューロンが電気信号のやり取りによって思考、認識の処理が行われます。
人間の脳は何層にも重なった構造をしており、ニューラルネットワークの研究初期から人工知能にも同じような層の仕組みを作り出そうと努力されました。
しかし、どうやっても3層までしか精度が上がらなかったです。
深い層だと誤差逆伝播が下の方まで届かないからでした。
一番上の上司の判断が最下層の末端の部下に届くまでに、ほとんど影響がゼロになってしまうような感じです。
では、ディープラーニングはどうやって解決したのでしょう?
従来の機械学習と大きく違う点が2つ。
ひとつは、1層ずつ階層ごとに学習していく点。
もうひとつが、自己符号化器(オートエンコーダー)という「情報圧縮器」を用いる事です。
自己符号化器では、出力と入力を同じにします。
八百屋で古いバナナと新しいバナナを交換してもらう感じ。
ややこしいですが、コンピュータは圧縮ポイントを試行錯誤して、自分で学習することになります。
これは統計学でいう「主成分分析」と同じです。
ディープラーニングでは、この作業を1段、もう1段と重ねていきます。
赤ちゃんは目や耳から入ってくる大量の情報から、何が何と相関しているか、なにが独立しているかという「演算」を高速で行ってるはずです。
予測しては答え合わせを繰り返すことで様々な特徴量を発見し、やがて「お母さん」という概念を発見し、まわりにある「もの」を見つけ、それぞれの関係を学びます。
そうして少しずつ世界を学習してるのです。
ディープラーニングは「データをもとに何を特徴表現すべきか」という、これまでで一番難しかった部分を解決する糸口です。
「ちょっと違ったかもしれない過去」のデータをたくさんつくり、それを使って学習することで「絶対に間違いではない」特徴量を見つけ出します。
そして「絶対に間違いではない」特徴量であるがゆえに、その特徴量を使った高次の特徴量も見つけることが出来るのです。
ディープラーニングはどう変化していくのか
今後AIはどのような発展をしていくのでしょう。
まずは、画像特徴が抽象化できるAIから、マルチモーダルな抽象化が出来るAIに進化します。
画像を見分けるのは、人間の「視覚」にあたります。
ですが、人間は聴覚や触覚といったそれ以外の感覚器も持っています。
音に色が無いように、本来視覚と聴覚、触覚はデータとして本来全く異なります。
しかし、脳の不思議なところは、こういったデータの種類に依存せず、同じ処理機構で処理されてるのです。
ディープラーニングも同様で、様々なデータに対して同じような手法が適用できるはずです。
そして行動と結果の抽象化が出来るAIです。
コンピュータが自らの行為と、その結果を合わせて抽象化することです。
人は生き物なので、自分が指令し身体を動かした事で目に見えるものが変わったのか、身体は動かしてないのに、目に見えるものが変わったのかを区別する必要があります。
自分がドアを開けたのか、勝手にドアが開いたのかは、人間の生存にとって非常に良い大きな差異なのです。
敵かも知れませんもんね。
こうして、自らの行動と結果をセットで抽象化する事が出来ると、「イスを動かして、その上に乗って、高い所の荷物を取る」という「行動の計画」が立てられるようになるのです。
なるほど!面白いですね!
続いてそういう行動が出来るようになると、「行動した結果」についても抽象化が進みます。
ゲームが難しいかどうかは実際にやってみないとわかりません。
将棋の盤面を見て「ちょっとやばそう」とか、ガラス細工を見て「割れやすそう…」とかは、動作した結果を逆に「そのもの自身の性質」としてとらえているのです。
学習が進めば、そうした抽象的な概念もコンピュータが学ぶようになります。
人間で言うと「あ、そういうことか!」「なんかコツがわかってきた」というような事が起こります。
そうなると見た瞬間に「割れやすそうなガラス細工だから気をつけよう」という状況に対する認識が深くなり、ロボットの行動はより環境に適したものになるんです。
ここまでくると、僕たちが日常的に使っている「概念」はほぼ出揃います。
人間並みの「身体」を持てば、人間が作り上げる概念に近いものは獲得できます。
ネットの人工知能であれば、ネット上にある事象をベースにして抽象概念は獲得できます。
そうなると、コンピュータが「言語」を獲得する準備が整います。
先に「概念」を獲得できれば、後から「言葉(記号表記)」を結び付けるのは簡単だからです。
「ニャー」「やわらかい」「ネコ」という概念はできてるから、コンピュータは概念とその言葉をセットで理解します。
シマウマを見た事ないコンピュータも、「縞模様のウマ」と聞けば、「あれがシマウマね」と一発でわかるようになります。
それが出来るようになると、その言語が何語かは関係なくなります。
コンピュータによる翻訳が実用に耐えれるものになるのです。
翻訳ってかなり高度な技術だったのね。
さらに!コンピュータが人間の言葉を理解できるようになるということは、「人間の文章を読むとそこに何らかの情景が再現できる」ようになるということです。
するとコンピュータも本を読めるようになります。
そうなるとコンピュータはもの凄い勢いで人間の知識を吸収していきます。
大体こんな感じのロードマップで人工知能研究は進展していくと思われます。
「人工知能は難関を超えるか」を読んでやってみた
世界はどう変わるのか考えよう
実践してみたこと
- 未来を予想してみた
- 僕は何をしたらいいの?
AIの技術って面白いですね。AIを理解すると人間を理解できるし、そこから未来も想像出来ます。
今後AIによって僕らの仕事はどのように変化するのでしょう?
現在の人工知能は画像認識の段階です。
インターネットの検索や画像診断に使われています。
次に来るのが「行動とプランニング」の段階です。
自動運転、農業の自動化、物流のラストワンマイル。
この辺は今現在世間でも注目されてる分野ですよね。
体を動かす労働の分野で人間の代わりに働くロボットが普及します。
この次が「行動に基づく抽象化」の段階です。
家事、介護、他者理解。
強く握ると人間は痛く感じる、というような事を理解します。
感情を理解すると、相手を喜ばせることを言ったり、受付などの業務が可能になります。
次が「言語との紐付け」の段階です。
翻訳、海外向けEC。
Siriのように人間が言葉を投げかけて答えるのではなく、人工知能が外界をシミュレートしながら思考して答えるようになります。
言語の壁が無くなると、これまで以上にビジネスのグローバル化が進みます。
そして「さらなる知識獲得」の段階です。
教育、秘書、ホワイトカラー支援。
知識を身に付けた人工知能が教えてくれるようになります。
仕事のアドバイスなんかもしてくれるでしょう。
人間に比べても人工知能の方がミスは圧倒的に少ないのです。
自動運転が普及すると今より安全な交通環境になります。
広告やマーケティングは真っ先に変化が起きるでしょう。
医療や法務は最も人工知能が得意とする分野です。
じゃあ、僕は何の仕事をしたらいいの?
今は小売業のサラリーマンやってるけど、正直やっててAIでいいやんって思います。
もちろんそれぞれの仕事の猶予時間は違うので、一概には言えません。
「手続き化」できる仕事は変わるの早そうです。
「異変のチェック」もセンサーとAIにより入れ替わりそう。
対人コミュニケーションが必要な仕事は置き換えるのは難しそうです。
このブログでもその辺についての本は多数紹介しているので、是非読んでみてくださいね。
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落合陽一さんと考えるこれからの未来。
著書名 人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)
著者 松尾豊
出版社 KADOKAWA