世界的に注目され大ヒットしたトマ・ピケティ著「21世紀の資本」をわかりやすく解説。

解説してくれるのはあの高橋洋一さん。正直「21世紀の資本」に興味を持って読んでみたものの難解さに挫折した方もいるかと思います。

これを読めば理解も深まるのではないでしょうか。

「ピケティ入門」トマ・ピケティの「21世紀の資本」を読み解こう!格差社会って今後どうなる?

なんかとても脳が鍛えられる感覚

この本を読むと得られるもの

  • ピケティの理論がわかりやすく解説されています
  • 原書を読む前に読んでおくと理解が深まります
  • 壁となりやすい経済用語についても解説されています

 

トマ・ピケティの「21世紀の資本」は大ヒットとなりました。

正直経済系の本がここまでウケるのかと驚きました。

 

ざっくり言うと、

一部のトップ層に富が集中し、「持てる者」と「持たざる者」の格差が広がっている

という内容です。

 

しかし、この本は言うても経済の本なので分厚いし、難しいです。

慣れていないと読み進める事すら困難です。

 

そこで財務官僚であり、橋下市政の特別顧問も務めた経済学者の高橋洋一さんがわかりやすくまとめてくれます。

これをきっかけに原書を読み直すのもアリだと思います。

 

この本では、

  1. 21枚の図で「21世紀の資本」を読んでみよう
  2. 結局のところ、ピケティは何を言いたいのか?
  3. 「21世紀の資本」その先の可能性

の項目で、ピケティの本を解説されてます。

 

解説の要約という、どこまで砕くねんと思われる方は、是非とも本を読んでみて下さいね!

日本のGDP成長率がヤバい

「21世紀の資本」の最大の魅力は、先進国から新興国まで世界中の様々な国の膨大なデータを集めた事です。

そしてそれをさらに、並べてみてどのような事が見えてくるのかを作業した事です。

 

ピケティは終始一貫「データありき」で、そこから世界的な傾向を読み解いていく姿勢です。

すると、今後の推測も立ちやすく、僕たちがどのような未来を選択したらいいか、という事も見えてきます。

 

まず見ておきたいのは、この世界がどのように発展してきたかという、歴史的経緯です。

もちろん国ごとに人口もテクノロジーの進み具合も違います。

 

世界のGDPと人口推移

ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジアの世界GDPにおけるシェアを見てみます。

GDPとは、「市場で取引された財やサービスの統計」であり、国民全員が仕事で得た所得の総額です。

 

それと合わせて各地域の人口分布のシェアも合わせて見てみると、アメリカとヨーロッパの人口シェアはアジアとアフリカに対してかなり少ないことがわかります。

アメリカとヨーロッパで20〜30%程度です。

しかし、GDPは合わせて35〜55%もあり、特に1820年以降は顕著です。

 

より少ない人口で、より多くのGDPシェアを獲得した欧米。

その理由は、もちろん「産業革命」です。

テクノロジーの進化で、飛躍的に国民一人当たりの生産量が上がったのです。

 

しかし、2012年には欧米のシェアが50%まで下がり、今後も下がり続けると予想されます。

これは、発展してきたテクノロジーが、もはや欧米だけのものでなくなったからです。

欧米以外の国の追い上げが始まりました。

ピケティの見解では、アジア・アフリカの追い上げはいつ終了するかはまだわからない、としています。

 

次に押さえておくのは、世界の人口です。

経済は、人口という要素を加味しなければ語れません。

GDPは所得を得る頭数にも関係しているからです。

落合陽一とSDGsを考えてみると新しい世界には希望しかなかった!「2030年の世界地図帳」

 

現在は世界的な人口減の時代です。それもかなり急激です。

「人口転換」が進んできたのです。

 

人口転換とは、多産多死から少産少死へと変化する事です。

現在はその最終段階であると考えられてます。

 

これを踏まえてピケティは、

この先貧困国の追い上げが進み、やがてはGDPのシェアが人口シェアと同程度になる

と予測しています。

21世紀末の世界GDP成長率は1.5%前後になると予測されます。

 

まず、経済成長がなければ、決して格差は埋まりません。

ピケティは課税の累進制を勧めています。より豊かな人からより多くの税金をとる税制が格差是正の切り札なんです。

でも、それも経済成長という土台があってこそ。

そのパイを分け合う形です。ただし高橋さんは国際規模の累進課税強化はかなり難しいと予想されてます。

 

「うーん、そうなら日本って厳しくない??」

日本だけで言えば、この20年、日本のGDP成長率は世界最低水準です。

世界の大半が3%代の中で、日本だけが低いという実情です。

 

ピケティは2014年のインタビューで、

「安倍政権の物価上昇を起こす姿勢は正しい。4月の消費税増税はいい決断と言えず景気後退に繋がった」

と言ってます。

 

デフレ脱却はGDP成長率を高める第一歩です。

格差是正のために累進課税を強化するのも良い選択肢です。

 

しかし、累進課税をやるにしても、しっかりとした納税者番号と、社会保険料と税の一体徴収が必要です。

先進国では当たり前の税インフラを日本でも整備しないと、うまくできなくなるでしょう。

 

経済の重要指数「インフレ率」

二つの世界大戦を機に、金本位制が世界的に失われて、急激なインフレが起きました。

金の産出量と関係なく、戦費をまかなう為にどんどん紙幣が刷られたのです。

 

物価は「モノとカネのバランス」で決まります。

カネよりモノが溢れるとデフレになり、逆だとインフレになります。

 

これ以後、欧米は物価変動という不確実性を常に考慮してしないといけなくなりました。

「安定した通貨参照点」は、二つの世界大戦に伴う金本位制の崩壊とともに、20世紀に失われたのです。

 

しかし、インフレは悪いこととは言い切れません。

インフレが起こると公的債権の負担は軽くなります。

 

「資本」とは何か?

ピケティは「資産」と「資本」をほぼ同じ意味で使っています。

ヨーロッパ諸国の民間資本は、1910年では国民所得の600%以上あったものが、1950年には200%程度にまで落ち込みました。

 

ロシア革命による資本の焦つきや、非植民地化プロセス以上に大きかったのが、民間貯蓄率の低さでした。

ヨーロッパが栄華を謳歌したベル・エポック期が終わり、ヨーロッパの資本家たちの所得は激減しました。

急激なインフレで国債も紙クズとなり、外国資本も切り売りされました。

 

アメリカの資本/所得比率はヨーロッパよりはるかに安定していました。

それでも、世界大戦後は無視できないレベルで民間資本は減少しました。

 

こうして一旦減った民間資本ですが、1970年以降は再び増加します。

これはアメリカだけでなくヨーロッパ、さらにはカナダや日本など他の富裕国でも同様でした。

 

これには2つの原因があります。

ひとつは民営化、もうひとつは資本価値そのものの上昇です。

 

民営化とは公的資本が民間資本に移行する事です。

資産価値の上昇は戦後徐々に復活します。

ピケティは、資本/所得比率βは、国民所得に占める貯蓄率s/GDP成長率gで求められるとしています。(β=s/g)

つまり、毎年より多く蓄えて、よりゆっくり成長する国ほど、資本/所得比率は高くなるのです。

 

21世紀に、資本/所得比率はどう変化していくのでしょう?

成長率は1.5%にまで減少するんでしたよね。そして貯蓄率は10%で安定するとピケティは見ています。

これらを当てはめると、21世紀の資本/所得比率は700%近くになると予測できます。

これは20世紀初頭の水準です。

 

もちろん不確かな予測のため、可能性のひとつに過ぎません。

しかし、地球全体が20世紀初めのヨーロッパのようになる…。

 

さらに21世紀末までに、アジアが世界の民間資本の半分くらいを所有するようになると予測されます。

特に中国ですよね。

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資本所得の上昇

持っている不動産や株などの資本から得られる所得を「資本所得」といいます。

富裕国では、1975年から2010年にかけて、国民所得に占める資本所得の比率が増加しています。

 

富裕国トップ1パーセントの高所得者の所得が、国民所得においてどれくらいの比率を占めてきたかを見てみます。

するとかなりの勢いで上昇しているのがわかります。

 

もちろん、高くなるほど所得格差は拡大しているという事です。

これは高齢者の割合が高まるほど、社会全体では格差も広まります。

 

もうひとつ、近年の格差拡大の要因として注目すべきは、桁違いの超高給を得る「スーパー経営者」の台頭です。

それまでの水準で考えると「法外な」所得を得る企業トップが現れた為、上位1パーセントの国民の所得が押し上げられたのです。

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ただし、スーパー経営者の台頭は、技術の変化や発展による必然的現象ではないとピケティは言うのです。

そうなの?それが原因だと思ってました。

 

見てみると、確かにアングロ・サクソン諸国の中でも大きな差が見られます。

特にアメリカの18%弱が突出しています。

このグローバル時代に、アメリカだけ特別な技術革新があったとは言いにくいですね。

制度的なものなのか、国民性の違いなのか?

 

しかし、もっと注目すべきは非アングロ・サクソン諸国とアングロ・サクソン諸国の差です。

このデータに込められたピケティの主張は後に語られる税率においてさらに鮮明となります。

 

国によって程度の差はあっても、世界中で所得格差は広がっています。

欧米では、所得のみならず、資本においても格差は広がっているのです。

ここでピケティの結論「今後常に、資本収益率は成長率に勝る」に行き着きます。

 

ピケティは歴史的事実として、資本収益率rは常に成長率gよりも大きい(r>g)と言う式が成り立つとしています。

これは論理的必然ではなく、歴史的事実として考えているのです。

 

古代から17世紀の社会では、成長率gは0.1〜0.2%です。これに対し資本収益率rは最低でも2〜3%です。

なんと10〜30倍もの圧倒的な規模なんです。

 

これは21世紀まで見ても、資本収益率は常に世界GDP成長率よりも高くなってます。

人口増加率は今後低下して、それに従って成長率は鈍化し、2100年には世界GDP成長率は1.5%にまで下がると予想されたんですよね。

言い換えると、21世紀の成長率は19世紀ほほぼ同等ということです。

したがってrとgの格差は、産業革命期と同じ水準に近づくのです。

 

ただし!この資本収益率は「税引き前」のものであるので要注意なんです。

資本収益に対する課税や、戦争や恐慌の影響による資本破壊を加味するとまた違った結果になります。

 

特に21世紀では、経済のグローバル化に伴って国家間の脆性競争がまずます激しくなり、資本への課税は次第になくなると考えられます。

「タックスヘイブン」と呼ばれ、世界中の資産化が資金を移すスイスなんて典型ですよね。

 

ピケティは資本にかけられる平均税率をこのように仮定しています。

2012年〜2050年は10%、2050年から2100年は0%!

 

その為、その差はまずます拡大すると予測されるのです。

ピケティの推測では、平次においては常にr>gとなり、格差は広がるのです。

「ピケティ入門」を読んでやってみた

データ量が半端なかった

実践してみたこと

  • 経済について考えるきっかけとなった

 

いやあ、すごいですねえ。

かつてノーベル経済学賞を受賞したサイモン・グネックスの「格差は縮まる」という理論と真逆の結論をピケティは掲示しました。

グネックスの時代では無理だったデータを入手したことで、これを発見したのです。

データを集めた国は20カ国。取り上げたタイムスパンは2000年。

何百人もの経済学者は協力して作り上げた、素晴らしいデータベースに恵まれたからこその仕事だったのです。

 

経済学の新たな歴史的瞬間だったということなのです。

 

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著書名 【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める!

著者 高橋洋一

出版社 あさ出版

 

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