「予想どおりに不合理」行動経済学でわかるゼロの威力!無料は魅力?毒薬?
行動経済学のベストセラー本を読んでみた
この本を読むと得られるもの
行動経済学の面白さがわかります。
普段自分が無意識にやっている行動の心理学が学べます。
行動経済学を活かした思考ができるようになります。
「行動経済学」をご存知でしょうか?
人間は合理的な消費行動をする前提で考えられているのが経済学。
人間はいかに不合理かを追及したのが行動経済学で、経済学と心理学を合わせたような学問です。
ダイエットするぞと誓っても、デザートを見ると決意が吹っ飛ぶのはなぜか?
別に必要なかったのに、セール品を買い漁っているのはなぜか?
同じ薬でも、安い薬より高い薬の方が良く効くのはなぜか?
この本を読めば、自分や周りの人達を動かしているのは何なのかを知る事が出来ます。
食事や買い物、先延ばしなど様々な面ではどの様なものが働きかけているのか気になりますよね。
この本では、
相対性の真相
需要と供給の誤謬
ゼロコストのコスト
社会規範のコスト
無料のクッキーの力
性的興奮の影響
先延ばしの問題と自制心
高価な所有意識
扉を開けておく
予測の効果
価格の力
不信の輪
わたしたちの品性について
ビールと無料のランチ
という項目で書かれています。
ここでは、ゼロコスト「なぜ何も払わないのに払い過ぎになるのか?」と、社会規範的コスト「なぜ楽しみでやっていた事が、報酬をもらったとたん楽しくなくなるのか」について要約します。
興味湧く内容やな。確かになぜボランティアはやるのに、同じ内容で時給200円なら誰もやらないのでしょうね。
他の項目も気になると思います。是非本で読んでくださいね。
無料の本当の魅力と不合理さとは何か?
宮本むなしって凄いですよね。
定食を注文すると毎回サラダや卵を無料で付けてくれるチケットをくれるんです。
そのチケットを使う為に2日目もむなしに行くと、またチケットをくれて3日目も行きました。
むなしも凄いけど無料の力も凄いし、連日行く俺もある意味凄い。
これ、最初からサラダの付いてる定食じゃないところがミソですよね。
最初から付いてても同じなのに、無料チケットのお得感がハンパない。
著者のアリエリーさんの実験では、リンツのトリュフと、ハーシーのキスチョコで同じような実験が行われました。
テーブルには「お一人様ひとつまで」と書かれています。
リンツは高級チョコで、1個30セントほどです。
キスチョコはどこにでも売ってる一般的なチョコです。
ハーシーは1個15セント、キスチョコは1個1セントという値段で販売しました。
予想通りみんな合理的な買い物をしていきます。お得なトリュフは大人気。
およそ73%がトリュフを、27%がキスチョコを買っていきました。
ここでいよいよ無料の実験です。
今度はトリュフを14セント、キスチョコを無料で提供しました。
それぞれ1セントずつ安くなってます。結果やいかに?
なんとトリュフは31%、キスチョコは69%にもなりました。
これは一体どういう事なんでしょう?
相対的な価格差は変化していないし、それぞれ得られる満足感も変わっていません。
経済学で考えれば、状況はすべて同じなんだから、同じ選好の差によってトリュフを選ぶはずなんです。
バッグからお金を出すのが面倒だったのかもしれないので、ついで買いのシチュエーションでも再度実験しましたが、結果は同じでした。
無料になると飛びつきたくなるのは、私たちは何かが無料になるとその物の悪い面を忘れ去り、提供されるものを実際よりずっと価値のあるものと思ってしまうからです。
無料の本当の魅力は「恐れ」と結び付いています。
無料のものを選ぶと目に見えて何かを失う心配がありません。
ところが無料でないものを選ぶと、まずい選択をしたかもという危険性がどうしても残ります。
なので二択でどちらかと言われれば、無料を選ぶのです。
得られるものと失うものが同じ価値の場合、人は失う物の方をより重要に思うわけですね。
価格設定の世界では、ゼロは単なる価格とはみなされません。
価格ゼロの効果は単独で独自のカテゴリーを作っています。
アマゾンでも無料で10ドルのギフト券がもらえるのと、7ドル出して20ドルのギフト券がもらえるのでは、断然前者でした。
どう考えても後者の方がお得なのに、不合理な行動が取られるのです。
これめっちゃ面白いよね。
ゼロの効果は時間など他にもにも当てはまります。
無料のアイスの試食の為に、30分も並んだりします。
1カロリーを謳ったビールよりも「ゼロカロリー」の方がよく売れます。
もし商売をしていて、この点を理解したなら、色々なことに使えますよね。
お客を大勢集めたいなら何かを無料にしましょう!
商品をもっと売りたいなら、買い物の一部を無料にしましょう!
社会規範と市場規範。報酬の不思議
お誕生日会を開催してもらい、「みんな来てくれてありがとう!」と感謝の気持ちをお金で表現しようとするとみんな引きますよね。
逆に友達にソファーの移動をお願いした時に、友達は即座に来る必要もありません。
これはどういうことでしょう?
それは、私たちは社会規範が優勢な世界と、市場規範が規則を作る世界の2つを同時に生きているからです。
社会規範とは、私たちの社交性や共同体の必要性と切っても切れない関係です。
他人の為にドアを開けてあげるようなもので、どちらも良い気分になり、すぐにお返しをするものでもありません。
もうひとつの市場規範は全く違います。ほっこり要素は皆無で、賃金、価格、利息、費用などシビアな世界です。
市場規範には独立独歩、独創性、個人主義も含まれており、対等な利益や迅速な支払いという意味合いもあります。
面白い実験結果があります。
各グループに単純な作業を依頼します。
ひとつ目のグループには最初に5ドルを支払い、終わったら帰ってよいと伝えます。
労力に対してお金が支払われるので、この状況だと市場規範を適用して行動してくれそうです。
次のグループには、同じ指示と課題を与えましたが、報酬は50セントと随分少なくなりました。
これまた市場規範に沿って行動するだろうと予想できます。
最後のグループには、社会的な頼み事として依頼します。何も見返りがなく、お金の話もしませんでした。
このグループは社会規範を適用して行動してくれるだろうと予想します。
結果は、5ドル受け取ったグループは50セントのグループよりも約50%増で働いてくれました。
ほぼ予想通りですよね。
では、3つ目のグループは少額の人達よりさらに労働量は少なくなるのでしょうか?
結果は、50セントよりはるかに多く、5ドルよりもわずかに多いというものでした。
つまり、実験協力者たちは少額ながらお金よりも、お金の絡まない社会規範のもとの方が熱心に働いたと言えます。
同じ様な結果は至る所で見られます。
弁護士に退職者の相談に30ドルという低価格で乗ってほしいと依頼すると、多くの弁護士は断ってきました。
しかし、困窮している退職者の相談など無報酬で乗ってくれないかと依頼すると、圧倒的多数の弁護士が引き受けたのです。
0ドルの方が30ドルより魅力的に映ったということでしょうか?
これは、考えの中に一旦市場規範が入り込むと、社会規範が消えてしまうからです。
先程の実験で言えば、50セントのグループの人たちは「これはいい。研究の手伝いも出来て、おまけにお金ももらえるんだ」とは考えなかったし、そう考えて報酬なしの人達より熱心に働いたこともないということです。
50セントは少なすぎると判断したわけです。
では、お金の代わりにプレゼントだったらどうなるでしょう?
先程の実験と同じ金額でプレゼントに置き換えると、なんとどのグループも同じだけ熱心に課題に取り組んだのです。
つまり、ちょっとしたプレゼントで気分を害する人はいないということです。
例え少なくても、それによって社会的交流の世界に留まる事ができ、市場規範に近づかずに済んだのです。
では、実感をごちゃ混ぜにして、プレゼントの値段を伝えるとどうなるでしょう?面白いな!
結果は、お金の時と同じになりました。
値段の話が出た途端に、プレゼントは市場規範の領域に移動したのです。
へえ!やっぱりそうなるのね。
つまり人々は、無料なら喜んで手伝うし、相応の賃金が出ても喜んで働きます。
ところが、ほんの少額支払いを申し出ると、背を向けてしまうのです。
市場規範が台頭するには、お金のことを口にするだけで十分な事がわかります。
デートでレストランに行ったら、料理の値段は絶対口にしてはいけないという事です。
では、社会規範から市場規範に一度出てしまうと、その後はどうなるのでしょう?
これは僕も知ってました有名な実験で、託児所で行われたものがあります。
子供の迎えの遅刻に罰金を科してみました、というものです。
託児所では、最初は先生と親は社会的な取り決めのもと、遅刻に社会規範を当てはめていました。
遅刻すると親たちは罪悪感から、今後は時間通りに来ようという気になってました。
ところが、遅刻に罰金を科したところ、その社会規範は市場規範になってしまったのです。
つまり、罰金を科せられるのだから、自分の意思で遅れるようになったのです。
「お金払うから延長してもらおう!」って意識ですね。
しかし、面白いのはここからです。
数週間後に罰金を廃止してみるとどうなったのか?
託児所は社会規範に戻りました。
でも、親たちは社会規範に戻らず、罰金は無くなったのに親たちは時間に遅れ続けたのです。
なんなら社会規範も罰金も無くなったので、遅刻の回数は増えました。
なんとも悲しい実験ですねー。
社会規範が市場規範と衝突すると、社会規範の方が長時間消えてしまうのです。
社会的な人間関係は簡単には修復できません。
社会規範は一度でも市場規範に負けると、まず戻ってこないのです。
となると、友人に手伝ってもらう時に一番その気になってもらえる方法は何なんでしょう?
例えば、大きな家具をひとつ動かすだけなら、普通に頼んで問題ありません。
しかし、複数の家具を運ぶ時、特に隣で引越し業者がお金を貰って同じ作業をしている時にはいただけません。
同じように、隣に住む弁護士に、家を留守にする間郵便物を受け取って欲しいと頼むのは問題ありません。
しかし、それと同じだけの時間を割いて、無料で契約書を作成してくれと頼むのは問題です。
社会規範と市場規範の二股は、かけれないという事です。
特に企業は断固たる態度が必要です。
ある時は家族の様に扱い、ある時は利益を求める行動をするのは関係を崩します。
企業と従業員の関係も同じです。
社会規範は従業員に忠誠心を抱かせて、やる気を起こさせる効果があります。
Googleではこれが顕著ですよね。
従業員に渡すのはプレゼントか特別賞与か?
従業員が締め切りの為に家族との約束をキャンセルしてでも熱心に働くと約束したり、逆に今から飛行機で出張してくれと頼む場合も、何か同じような見返りを渡すべきなんです。
「予想どおりに不合理」を読んでやってみた
行動経済学を学ぶと得るものが大きい!
実践してみた3つのこと
- 報酬について考え直してみた
- 無料の効果についてさらに勉強してみた
- 決意表明をやってみた
いやあ、長いブログになってしまいました。
それぐらい語りたい話が盛り沢山なんです。
報酬について考え直してみた
僕も友達に手伝いを依頼することがありますが、報酬については難しいなあって思ってたんです。
お金を渡すなら、市場規範に切り替えるということなので、きちんと相応の報酬が必要ってことですよね。
友達価格でと中途半端なお金を渡してはいけません。
それも作業量で変わるって事です。
自分も金銭報酬以外の楽しさとか良い経験になる事ならお金も要らないですもんね。
無料の効果についてさらに勉強してみた
先述と逆になって面白いのが、無料とすると安売りの時より一人当たりとっていく個数は少なくなるそうです。
10円なら1人5個買っていったのに、無料だと1人1、2個ぐらいになるんですって。
うーん、社会規範と市場規範のバランスを取るのは難しいですね。
モノを売る仕事をしているので、ここは押さえておきたいとこです。
決意表明をやってみた
先延ばしにしない為には「決意表明」が効果的だそうです。
自分で締め切りを決めた人は、何も締め切りを設定しなかった人より、もしくは締め切りを他人に設定された人よりも優れた成果を残せたんですって。
あらかじめ決意表明するツールを与えるだけで、良い成果残せる助けになるんです。
これは自分にもメンバーにも使えますよね。
著名な経営者たちがよく勧めてる本だけあって非常に面白い内容でした。
是非本を隅々まで読んでほしいです。
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こちらも人間の心理を分析した有名な本です。
著書名 予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
著者 ダン・アリエリー
出版社 早川書房