この本を読むと得られるもの
- 「死」について考える機会に恵まれます
- 病気と向き合う人との触れ合い方が学べます
- 自分が死ぬまでにやっておきたい事が見えてきます
「もしも一年後、この世にいないとしたら」がん患者さんの生き方から人生を学ぶ
うちの身内もがんでした
「自分の人生がいつ終わりを迎えるのかは誰にもわからない。
だからこそ、今生きている瞬間をかけがえのないものとして大切にしてほしい」
27歳という若さでがんによりこの世を去った、オーストラリア人女性の最後のメッセージです。
Facebookで世界中に拡散されました。
また、僕が座右の銘としているニーチェの言葉も「生」について考えさせてくれます。
今のこの人生を、もう一度そっくりそのまま繰り返してもかまわないという生き方をしてみよ。
今や「人生100年時代」となりました。
一昔前からは考えられないくらいに年配者の方達も元気です。
しかし長くなった分、日々を粗末にしていないでしょうか?
まだ〇〇年もあると油断していないでしょうか?
多く人が「死」はいつか自分にも訪れるとは分かっていても、実感はしていないのかもしれません。
まだまだ人生は続くのが当たり前のように日々を過ごしています。
「絶対やりたい」と思う事も、「明日やろう」「落ち着いたら」「定年後の楽しみに」と先延ばしにしてしまいます。
毎日の生活に充実感がなくても、「変わりたい」という気持ちよりも不安が勝ってしまい、現状に甘んじているのかもしれません。
「今やろうよ」という内なる声を信じられず、「いや、そんな事したら人生がぐちゃぐちゃになるかもやん」という声が勝ります。
そして結局虚しく今と同じ日々を歩んでしまうのです。
もちろん僕もそうです。
だからこそのあの座右の銘です。
著者の清水さんは、精神腫瘍学を専門とする精神科医の先生です。
精神腫瘍学って初めて聞きました。
がんになった患者さんと家族のケアを3500人以上もされてきました。
突然がんの告知を受け、人生の期限を意識するというのは大変苦しいものだと思います。
その中で残りの人生をどう生きるかを真剣に悩む患者さんたちの言葉はとても力強く、なんとなく生きていた清水さんにとっても、心から異界の念を抱く体験だったのです。
その結果、清水さんの人生も大きく変わりました。
後回しせずに取り組んだ方がよい事と、あまり自分にとって大切でもない事を、きちんと区別されるようになったのです。
この本では、
- がんは体だけでなく心も苦しめる
- 苦しみを癒すのに必要なのは、悲しむこと
- 誰もが持っているレジリエンスの力
- 人は死の直前になって、心のままに生きていないことに気付く
- 今日を大切にするために、自分の「What」に向き合う
- 死を見つめることは、どう生きるかを見つめること
のテーマで、清水さんが学んだ事を教えて下さいます。
人生をどのように生きるかという、もっとも大切でありながら、死が近づかないと意識しないのは手遅れになりかねません。
この本を読んで、一度じっくりと考えてみましょう。
自分の人生の残りの時間がわかったら
自分が今、窮屈だと感じていたら、心の声に耳を傾けてみるのも大切です。
もちろんいきなり会社を辞めるとかを衝動的に決断するのはオススメしないです。
しかし、何かを判断する時に「死」を意識しているかどうかで、答えが変わることは多々あります。
絶対にやりたい事があっても、ズルズル先延ばししてると、実現しないまま死んでしまうかもしれません。
締め切りを意識しないまま、先延ばしで生きることは、その事が実現しないという結果に近づいていってるのです。
ここを肝に銘じて着実に準備していきましよう。
27歳で進行性のスキルス胃がんになられた患者である岡田さんは、告知を受けた時、現実かどうかもわからなくなり、その後の記憶も飛んで、どうやって家に帰ったのかも覚えていなかったそうです。
心が想定を超える衝撃的な出来事に出会うと、目の前を認識はできても、現実と思えなかったり、記憶として定着しない事があるそうです。
これを「解離状態」といい、心を守る為の機能なのだと思います。
岡田さんはその日は眠れず、翌日は激しい絶望感が一気に襲ってきました。
岡田さんは自分の運命に納得いかず、叫んだり両親に八つ当たりすることもありました。
怒りが収まると今度は悲しみでいっぱいになります。
岡田さんのように、喪失を受け入れるには時間と様々なプロセスが必要なのです。
怒ったり、泣いたり、取り乱したりと、様々な様相を呈しながら、少しずつ向き合うようになると言われています。
こうしたプロセスを経て、人はがんになる前に描いていた人生と徐々に別れを告げ、新たな現実に向けて歩み始めると考えられています。
岡田さんは、病気になる前はストイックな暮らしをされてました。
金融機関に勤めて、外国で働くべく勉強したり、ジムに通って体作りをされていました。
岡田さんにとっては「5年後、10年後の未来の夢を実現する事」が人生の目的であったのです。
しかし、その「描いていた夢」は決してやって来ない事がわかりました。
日々の努力の先にあった目標が見えなくなったのです。
岡田さんは大混乱に陥り、生きる意味もわからなくなりました。
「10年先がないとしたら、人は何のために今を生きるのだろうか」
そして岡田さんは主治医の勧めで、清水さんのもとにカウンセリングに来られました。
最初はカウンセリングに対しても半信半疑です。
自分より長生きするであろう人に自分の気持ちがわかるのか。
「岡田さんは将来のために『今』を生きてきたんですね。将来のために『今』を犠牲にしてきた。
だから『今』の生き方がわからない」
「その通りだと思う。自分はどうしたらいいのか一緒に考えて欲しい」
心理学領域における心的外傷後成長に関する研究から、その人の考えは5つの変化が生じうる事が明らかになっています。
- 人生に対する感謝
- 新たな視点(可能性)
- 他者との関係の変化
- 人間としての強さ
- 精神的変容
この変化について知ると、生き方にも大きな変化が現れます。
今日という中で、とるに足らない事と、大切にするべき事をきちんと見分ける力が備わったようになります。
多くの人が最初に起きるのが、「人生に対する感謝」です。
死を認識すると、「今日生きている事が当たり前の事ではないんだ」という考えが生じます。
人は希少性があるものに価値を感じる習性があります。
時間が限られている事がわかると、一日一日の時間がとても貴重に思えてくるのです。
岡田さんも最初は「最悪のくじを引いてしまった」と言ってました。
清水さんは前置きした上で、「あくまでの仮説の話ですが、くじを引かなかった方がよかったですか?」
「つまり、病気になる人生だったら、生まれてこない方が良かったですか?」
岡田さんもしばらく考え込まれます。
「いや、くじを引かない方が良かったとは思いません。
うん、最悪のくじだとしても、引けた方が良いかな」
岡田さんはもともと前向きな性格です。
「正直悔しい。しかし、今生きられることに感謝して、精一杯生きたい」
そう仰られたのです。
僕たちも岡田さんのように、突然がんの告知を受ける時が来るかもしれません。
事故に遭うかもしれないし、災害に巻き込まれるかもしれません。
怖がってばかりもいられないですが、健康はいつか失われるものだという意識をどこか心の片隅に持っておくべきです。
家族と過ごしたり、美味しいご飯を食べたりするのも、意識しないと当たり前のものに思ってしまいます。
まさに「メメント・モリ」、死を思え、という教えと繋がります。
「もしも一年後、この世にいないとしたら」を読んでやってみた
前向きに生きるために必要なこと
実践してみたこと
- 自分にとってもっとも大切な時間とは何かを考える
マルチン・ルターの言葉に
「たとえ世界の終末が明日であっても、自分は今日リンゴの木を植える」
という言葉あります。深いですね。
清水さんは最初がん体験と向き合うことは最初は苦痛でした。
がん患者の語りの中には、もちろんショックと怒り、悲しみ、絶望などの負の感情が溢れていました。
この語りを聞きながら、この人たちはずっと絶望の中で生きていかないとならないのだろうと想像していました。
清水さんの役割は、そのような苦しみに寄り添うことです。
絶望がずっと続くと思ってた清水さんにとってそれはとても辛く、逃げ出したい体験でした。
しかし、それが役割なんだからと自分に言い聞かせて、なんとか続けていけました。
そうすると、不思議なことが起き始めたのです。
先述したように、患者さんに心境の変化が起きるのです。
もちろん病気になった苦しみは抱え続けるのですが、それまで以上に日々を大切に生きようとされるのです。
亡くなる前に感謝の気持ちで満たされる人がいらっしゃることに驚きました。
清水さんが若い時に、20代でがんになり、手術をしたけど再発した患者さんがおられました。
その患者さんの担当となり、「どんな心境なんだろう?もし自分なら耐えられないだろう。そんな彼に何か言葉をかけられるのだろうか?」と思いながらも、その患者さんの病室に向かいました。
しかし、その彼はとても前向きで、清水さんにも「会いに来てくれてありがとう」と笑顔で迎えてくれました。
周囲の人にも感謝を伝えて、ジュースを飲んで「美味しい」と笑顔を見せます。
清水さんはその時、なぜそんなことが出来るのかが理解できませんでした。
半年後、彼は亡くなりました。お父さんが涙ぐみながらも関係者にお礼を述べられます。お父さんも辛い気持ちの中、周囲に気を配ってらしたのです。
清水さんは彼や彼の家族に尊敬の念を抱きました。
「自分は何の為に生きるのか」が分からなかった清水さんに、きっとどこかに道筋はあるだろうと希望を与えてくれました。
読んでいて、僕の中にも死生観というものが出てきた一冊でした
死んだら全てが終わります。
今のままで、死ぬ時に満足して死ねるのだろうか?
そうなると、他人からの評価に縛られていても特に良い事はなさそうです。
もっと自分の気持ちに素直になって、自分にとって大切な時間を優先するべきではないか。そんな風に思えます。
とりあえずこの本を読んでやってみよう、な!
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いかに生きていかに死ぬのか。
このテーマは人間の永遠の課題なのかもしれません。
著書名 もしも一年後、この世にいないとしたら
著者 清水研
出版社 文響社