「笑う科学 イグ・ノーベル賞」ユーモアな研究、才能の無駄遣い大賞!
イグノーベル賞、実は日本は受賞常連
みなさーん、今年もイグ・ノーベル賞の発表がありますね(大体10月ごろ)。
今年はどんな発表があるのか楽しみですね!
え?イグノーベル賞をご存知ない?
イグノーベル賞とは、偉大なる科学研究に贈られる名誉ある賞です。
その選考基準は「人を笑わせ、そして考えさせたか」です。
出典:QuizKnock
この動画を見てもらうと一番よくわかるかも知れません。
1996年にイグノーベル物理学賞を受賞した「バターが塗られたパンが塗られた面から落ちるのを防ぐにはどのようにすれば良いのか?」という命題をクイズにしたものです。
イグノーベル賞とは「Ig Novel Prize」、その由来は「Ignoble」イグノーブル=品がないという単語とノーベル賞を掛け合わせた造語です。
しかし、テーマはよく分からなくとも、解明された成果には現実世界の真理や科学研究の核心をついたものが多いです。
笑いと言っても知的思考に裏付けられた笑いなのです。
「とんでもない理論をぶちまけた人」
「その道の人たちの記憶には永遠に残る成果をあげた人」
「誰が得するかは分からないが、偉大な成果をあげた人」
たちに贈られます。
イグノーベル賞創設の歴史
この賞を創設したのは現在「ユーモア科学研究ジャーナル」の編集長を務め、創設以来イグノーベル賞委員会委員長でもあるマーク・エイブラハムさんです。
研修者でもあるエイブラハムさんがユーモア科学を扱った雑誌に投稿しようとしたところ、すでに廃刊になっており、問い合わせるとそこからなぜか編集長に誘われました。
それによりエイブラハムさんによって創刊されたのが「ユーモア科学研究ジャーナル」です。
そしてその関連で「イグノーベル賞」が企画され始まったのです。
本家には物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞、経済学賞の6つの賞があります。
しかしイグノーベル賞には心理学賞、公衆衛生学賞、栄養学賞、認知学賞など無数にあります。
これはお察しの通り、始めに賞ありきではなく、受賞対象を決めてから後付けで賞の名前を決めているのです。
世の中に存在する賞には多かれ少なかれ賞金や賞品が用意されますが、イグノーベル賞にはありません。
なんと旅費も自分持ち。エイブラハム氏曰く「明らかに価値のある出費」という恩着せがましい理由もあります。
本家のノーベル賞は厳かで格式高い授賞式にて表彰されます。
イグノーベル賞の授賞式は騒々しく自由な雰囲気で満ち溢れたものになっています。
しかし規模はどんどん大きくなり、今やハーバード大学にて行われるまでになりました。
受賞者のスピーチは最長でも60秒。笑いを取るのが鉄則です。
時間が過ぎると、ぬいぐるみを抱いた8歳の少女(ミス・スイーティ・プー)に「もうやめろ」と罵られながら退出になります。
これは「8歳の幼女に罵られるのが最も心理的ダメージが大きい」という過去の研究成果に基づくものです。
そしてスピーチ後には1200人の聴衆がステージに向かって紙飛行機を飛ばします。
対するステージ上の関係者も飛んできた紙飛行機を客席に投げつけます。
毎年この紙飛行機を片付けるのはハーバード大学の物理学者ロイ・グラウバー教授です。2005年にレーザーの理論で本物のノーベル賞を受賞したガチ教授で、本物を受賞したのは文字通りのパロディ的快挙でした。
賞状はコピー用紙にプリントしたもので、真ん中には台座から転がり落ちたロダンの「考える人」が描かれています。
そして2015年以降はなんと賞金として10兆ジンバブエドルも授与されることとなりました。
どんな研究がイグノーベル賞を受賞したの?
紅茶に美味しくビスケットを浸すには
誰も気にしないような些細なテーマの受賞例と言えば、1999年に物理学賞を受賞したレイ・フィッシャー博士の
「ビスケットを紅茶に浸す理想的な方法の考察」
があります。
著名な学者でもある彼が物理学の観点から至って真面目に考察したものです。
その研究結果がこちら。
一応説明しておくと、Lがビスケットを浸す時間です。γが紅茶の表面張力、Dがビスケットに空いた穴の直径の平均値、tが時間、η(イータ)が紅茶の粘性率を表します。
ビスケットを紅茶に浸したときに発生する毛細現象にウォッシュバーン方式を適用したものです。
なるほど分からん。
とりあえずなんか凄いのはわかった。
ハトはピカソを認知できるのか
「我々はピカソとモネの作品を目にすると、今まで見たことのない作品でもかなりの精度で作者を特定できる。
ところで、ハトにもこのような作品を見て作者を識別する能力はあるのだろうか」
慶應義塾大学の渡辺茂教授らは、この
「ハトによるモネとピカソの作品の識別」
という論文で、その類稀ない着想と、「認識能力あり」という驚きの成果が認められて、1995年のイグノーベル心理学賞を受賞されました。
この授賞対象が鳩の認知能力に関する研究だったのは、渡辺先生の専門分野が心理学の中でも物理学を援用した「比較認知科学」で、その数少ない研究者であることが深く関わっています。
心理学と物理学が重なり合うってこと自体初耳です。
もちろん問題なのが、その測定方法です。
人間の場合は見えたら見えたと言ってもらえばいいだけですが、鳩だと行動の変化を手掛かりにして感覚を推定するしかないということです。
しかも鳩の視力も問題です。人間のようにランドルト環の切れ込みで調べるわけにもいかないですよね。
詳細はよくわかりませんが、鳩の場合は縦縞と横縞の区別が出来るかで調べるそうです。
結果、鳩の視力は0.5です。
ちなみに鷹は4.7、隼は2.4なんですって。
で、本題はそれを踏まえてピカソとモネを認識できるかですよね。
実験にはピカソとモネの絵を10枚ずつ用意されました。実験に使われたハトはもちろん過去にどちらの絵も見たことないものばかりです。
論文では「芸術に造詣のない八羽の実験用ハト」と紹介されてます。この辺がイグノーベル賞受けするのね。
実験ではスクリーンに連続的に絵を映していきます。そしてピカソの絵が映された時にスクリーンを突けば餌が与えられて、モネだと与えられない仕組みが作られました。
この訓練を20日間続けると、ハトは双方の作品を90%以上で認識できるようになりました。
では、ハトはピカソとモネの絵が分かるようになったんでしょうか?
上記の実験だと20枚の絵を丸暗記したように思いますよね。
ところがなんと、今回の実験では使われなかった初めての絵を見せた時にも、ハトはそれがピカソかモネかを区別したのです。
ということはこの訓練でハトは2人の「作風」を理解したと言えます。
さらにグループではどうかも気になります。セザンヌやルノアールなどの印象派の絵はピカソよりもモネに近いです。
ブラックやマチスの絵はモネよりもピカソに近いよね。
そこで渡辺博士はハトにこれらの画家の絵も見せてみました。するとハトはそれらのグループにも同じような反応を見せたのです。
おお、凄いな。
これにより渡辺博士は
「ハトは何か印象派に共通なもの、抽象画に共通なものを見ているのだろう」
と結論を出しました。
「笑う科学 イグ・ノーベル賞」を読んでやってみた
読書の幅がさらに広がった(レベルアップのファンファーレ)
イケハヤさんが読書を続けてたら、直接仕事に役立つ本から、知的好奇心を満たすものにシフトしていくみたいな事を言ってました。
とうとう僕もその境地に来たようです…!
イグノーベル賞の本なんて、半年前だと絶対に読んでなかったと思います。
半年前は自分が興味があったジャンルは小売業しかなかったので、商品の売り方とかマーケティングとかそういう本しか読んでませんでしたもんね。
それが今や熊の本まで読むなんて…。進化を感じるぜ。
今の時点で読むのが辛いのは、哲学、宗教、幸せとかについて書かれた本です。
このへんは読んでてもちょっと退屈でやめてしまいます。
ここら辺が読めるといいなあ。
知的好奇心を刺激するにはピッタリの本だと思います。
他には犬と会話するとか、兼六園の銅像がハトに嫌われる理由とかについても書かれてます。
面白いので是非読んで見て下さい。
著書名 笑う科学 イグ・ノーベル賞 (PHPサイエンス・ワールド新書)
著者 志村幸雄
出版社 PHP研究所