新渡戸稲造の「武士道」には世界が絶賛する強くて優しい日本人の秘密がある
武士道とは美しき日本の大和魂だ
武士道とは漫画の「SIDOOH 士道」かゲームの「サムライスピリッツ」ぐらいしか接点がありません。
でもなんとなくイメージはありますよね。忠臣蔵ってまさに武士道。
著者は新渡戸稲造です。思ったより新しい。てっきり江戸時代初期ぐらいの本かと思いました。
しかもこの本は元々新渡戸さんが英語で書いて、アメリカで発売されたものなのです。
時は幕末。新渡戸さんは黒船と明治維新の間に、武家の三男として生まれます。新渡戸の家は西洋のものを多く置くようなハイカラな家でした。
それゆえの武士道と西洋文化のハイブリッドな人間性を育んだのです。
新渡戸さんは「少年よ、大志を抱け」クラークの札幌農学校を卒業した後アメリカに渡ります。
そんな時、世界を驚かせる出来事が起こりました。
日本が日清戦争で大国中国に勝ったのです。最近まで鎖国してた小さな島国が…!
西洋人からすれば日本はめちゃめちゃ不思議な国でした。
日本にはまず宗教教育がない事。海外では宗教教育こそが「心」を育てるものでした。
しかし日本には独自の倫理観と道徳観が行き渡っています。
そして日本ならではの価値観と美意識。
この西洋人にとっての摩訶不思議は、一体どうして日本人は学んだのだろう?新渡戸さんは考えました。
「そうか、武士道に違いない!」
そう気付いた新渡戸さんは日本人の精神を欧米諸国に伝えるために「武士道」を書いたのです。
この本は「武士道はいかにして生まれたのか」「武士道にとって一番大切な義と勇とは」「日本人はなぜそんなに礼儀正しいのか」「人として、いかに生き、いかに死ぬか」「切腹の意味」「新しい時代の武士道」が書かれてます。
このブログでは武士道の歴史と、7つの徳について書いていきます。
武士道とはいかにして生まれたのか?
武士道ーーー
それは侍の魂とも言うべき道徳です。本の冒頭には「武士道とは一言で言えば武士階級のノブレス・オブ・オブリージュである」とあります。
ノブレス・オブ・オブリージュとは「高い身分にある者が背負う義務」のようなものです。
身分の高い者は、その高貴さや特権に相応しい、立派な行いをしなければならない、と言う欧州の考え方です。
その考え方は日本にも通じる者がある。そう思った新渡戸さんはこの言葉を引用したのでしょう。
武士は鎌倉時代の封建制から始まります。
封建制とは主君と臣下の結び付きで土地と忠誠の関係ですよね。
その後、江戸時代まで武士の世の中が続きます。
戦う事を専門とする武士だからこそ、敵同士の間でも守られる「フェアプレイ」の精神がないと無茶苦茶になります。
この守るべき掟が「武士道」の始まりです。
しかし文章化された者でもなく、長い年月を通じて形成された、暗黙の了解のような「共通規範」なんです。
その思想はどこから来たのでしょう。これも日本独特な文化の特徴に起源があります。
まず仏教。
仏教は運命を受け入れる事、危険を前にしても心を乱さない事、生(せい)に執着する必要はない事、死を恐れない事。
これが仏教からの教えです。
現世の出来事で心を流されない思想を与えました。
次に神道。
日本の神道は自然を神様とした「八百万(やおよろず)の神」と呼ばれます。千と千尋の世界ね。
日本の神々は日本人の祖先でもあり、神道の教えとしては祖先崇拝だと新渡戸さんは言ってます。
神道の自然崇拝は国土を愛する気持ちに、また天照大神は天皇家の始まりなので、天野への忠誠心に繋がります。
神道は愛国心と忠誠心を武士道に与えました。
最後は儒教。
武士道に最も影響を与えたのは儒教であると新渡戸さんは言ってます。
儒教は孔子により広められた中国の思想です。特に主君と臣下の関係は、武士道の最も根幹部分となる者です。
そして更に影響を与えるのが、王陽明の陽明学です。陽明学は武士道に「知行合一」の精神を与えます。
「知行合一」とは、考える事と行動する事は食い違ってはいけないという教えです。
これら仏教、神道、儒教が武士道の素となったのです。
武士道の「7つの徳」って何?
武士道の特徴は他に「徳」という言葉にもあります。
徳は、人として優れた精神のことで、
「義」…いかなる状況にあっても間違った事や悪い事を避けて正しい行動を取ること
「勇」…正しい事を実行するのに必要な豪胆さ
「仁」…公正さに裏付けされた自分より弱い者への思いやり
「礼」…他者に対する敬意の表現
「誠」…真実性と誠意。嘘をつかない、ごまかさない
「名誉」…寛容と忍耐を必要とする、人間としての尊厳
「忠義」…自分を犠牲にしても主君のために尽くす
の7つがあります。
武士道を支えるサムライの基本条件が義と勇です。
人と向き合う時に大切な教えが、仁と礼と誠。
武士が命すら賭けたものが、名誉と忠義です。
特に義と勇が重視されていたようです。
義は武士道の中ではハッキリとどういったものか書かれていません。
正義は立場や思想によっても変わり、何が正しいかは他の徳を身に付けて見えてくるのであると思います。
勇とは何事にも心がかき乱されない平静さの事でもあります。我慢を学ぶことによって心の落ち着きを手に入れる。
ここは現代にも言える部分ですよね。
義と勇は互いに支え合うべき武士道の二本柱なんです。
逆にこの時代の「名誉」と「忠義」に関しては、現代と大きく離れてるかもです。
名誉と忠義の為に命を賭けるのは任侠しかないような。
武士道の名誉とは、恥を避け、自分の果たすべき務めを誇りを持ってやり遂げられるかどくかだと、新渡戸さんは言ってます。
武士はその名誉の為なら命を賭けたのです。
忠義は個人よりも国を重んじる心。
名誉は自分の為なら、忠義は他人の為に命を掛ける精神です。
他の徳は「忠義」を中心として、互いに繋がっています。
そこには切腹も関わってきて、現代の思想とはかなり掛け離れた感じです。
敵討ちも切腹も忠義や仁、そこから義に繋がっていくものです。
「武士道」を読んでやってみた
武士道が書かれた時代は鎖国が終了した、日本のグローバル化が進みました。
日本国内だけではなく諸外国との関係性が重要になった時代です。
よく考えると、現代もそう言えますよね。
企業のグローバル化が進み、外国人に日本の事を知ってもらう必要性が増しました。
実際日本人は、列をきっちり守る、電車もきっちりやってくる、犯罪率も低い、勤勉であるなど、外国人から尊敬される部分が多くあると聞きます。
まさに今こそ武士道の出番やわ。
もちろんハラキリではなく、質実剛健な大和魂が価値を持つ時が来たのでは?!
「義」のこころを忘れずにやっていきますよ!
著書名 武士道 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ2)
著者 新渡戸稲造
出版社