「対アマゾンのAI戦略 リアル店舗の逆襲」新しい環境に対応出来ないと絶滅する世界
小売店にAIを導入するとどうなるんだ?
この本を読むと得られる事
AIが小売業をどの様に変えるか予想できます。
今後AIが社会にどの様な変化をもたらすのか理解できます。
ECと実店舗の今後の関係性が学べます。
AIがカメラという「目」を持ったところからカンブリア爆発的な進化が始まります。
生物進化の歴史をAI発展のタイムスケールに当てはめると、ここから一気に変わる可能性があります。
生物で言うと、爆発的な進化のタイミングで環境に適応できた生物は生き残り、出来なかった生物が絶滅種しました。
今の世の中はまさにこれ。
環境に対応出来た会社だけが生き残るのです。
これがこれから起きる「第四次産業革命」です。
今の日本は人口減少による市場の縮小、労働者不足に加え、Amazonを筆頭としたEC企業の進出、さらにコロナによる環境変化で、流通・小売業は危機感に満ちています。
この本はそうした課題をAIで解決してやる!という現場からの報告です。
小売店がAIを導入したレポートが満載で面白いです!
是非読んでみて下さいね。
リアル店舗とAIの関係性
「リテールAI研究会」が、AIの導入レベルの定義を自動運転みたいな感じで定めました。
「Retail AIレベル5」というもので、
レベル0…100%人間が関与
レベル1…90%人が関与。セルフレジ、自動発注などの運営支援
レベル2…60%人間関与。部分的な自動店舗。カメラで棚監視、顧客導線分析
レベル3…40%人間関与。条件付きの自動店舗。緊急時以外は管理者不要
レベル4…10%人間関与。高度な自動店舗。カテゴリーマネジメントで商談不要
レベル5…無人店舗。商談、リベート、営業支店が無くなる
アマゾンが展開している「Amazon Go」はカメラで商品の収得を認識して、レジなしで会計出来ます。これでレベル3相当になります。
レベル4では商品の管理や発注も自動化されて、2025年以降での導入が予想されるレベル5では、営業の商談すらもなくなるのです。
メーカーにおけるレベル4では、ロボットの導入、AIによる最終的な意思決定。レベル5ではもちろん全部AIです。
トライアルグループの挑戦
福岡市にオープンした「スーパーセンタートライアル」は新しい買い物体験が出来るお店です。
スマートカメラとスマートレジによる効率化を目指したお店なんです。
出典:テレ東NEWS
ITやAIの活用で目指すのは、顧客の買い物体験向上だけではありません。
店舗のマネジメントも、顧客データの高度な活用、売り場と棚の管理、お客さんの行動の可視化と販売促進への応用にも挑戦しているのです。
店内には1500台ものAIカメラの設置と、カートにタブレットが付いてて精算も出来るスマートレジカートを100台以上導入しました。
名札も電子化して、自動で値段も変わるようになってます。もちろん日に合わせて細かい調整も可能。すげえ。
夜間はレジ要員もゼロ。
カートについた精算タブレットには、買い物に合わせてクーポンやオススメ商品も表示されます。
これはお客さんの7割以上が、事前に買う物を決めず、その場で決めているという事実からです。
スキャンした商品に合わせて、オススメレシピを表示させたりも出来るんです。
これにはメーカーから販促費を頂くこともされてます。
買い物はもちろんレジに並ぶ必要もありません。
店内のスマートカメラは、商品棚単位で画像を認識し、商品の在庫状況の変化を捉えています。
棚の前を通過するお客さんの人数も把握して、どの商品が見られてるかもわかるんです。
お店の入り口には看板サイズの大きなLEDディスプレイも設置されてて、その日に合わせて看板のサインも変わるんです。
店舗の壁にもディスプレイを多数設置して、様々な案内がされてます。
トライアルグループの試算では、市場全体では金額にすると46兆円のコストがまだ最適化されていないそうです。
メーカー側も自社製品だけでなく、その棚のライバル製品の動向がお店に行かなくてもわかるようになります。
この情報はメーカーにとってはヨダレが止まらないレベルのものですよね。
しかも365日24時間観察する事が出来るんですから。
さらに面白いのが、お惣菜の完成度をAIで分析して、カツ丼はこうした方が売れるよという研究も行っているんですって。
もうほんまAI先生やん。
店舗側が気になるのは防犯ですよね。
監視員を常時配置するのも無理な話。
スマートカメラだと、リアルタイムに分析して、不審者に警告を発する事が出来ます。
従業員も受診するので、ずっと監視しなくても対応出来るのです。
アマゾンの最強の武器は、顧客データと購買データです。
しかし、ネット市場だけでの顧客接点だけでは不十分なところが実店舗ではフォロー出来ると気付き、アマゾンもアリババも実店舗に注力しています。
非計画購入においては実店舗に敵わないし、家族や友達とショッピングを楽しむというエンターテインメント性もありません。
実店舗は「非計画購入」を喚起する場所としてAIを活用していくべきなんです。
そうなると実店舗の出店ですが、ここでもAIがこれまでにない精度で商圏を分析してくれます。
これまでの人の勘に頼る必要もなく、最適地を数値判断で選び出すんです。面白い!
しかも、その店舗に合わせた商品カテゴリーや価格政策もやってくれてと至れり尽くせり。
客側としても新しい体験が出来そうな予感にワクワクしますね!
Amazonやばい
これまでの小売業のマーケティングといえば、新聞の折り込みや店頭での告知のみでした。
個人に合わせてパーソナライズ出来るメディアも無かったし、元となる顧客データ自体もありませんでした。
大量に生産して、マスでマーケティングして、量販店でドンと売る。まさにどんぶり勘定ですが、細かくやるよりもどんぶりの方が効率的だったのです。
しかし時代は変わりました。モノを作っても売れないし、広告も世の中溢れまくってます。
もはや過剰生産、過剰店舗、過剰広告です。
そして競争は激化し、大型店の寡占が始まり、勝負はあったかに思われました。
だがしかし。ここでAmazonの登場です。
みんな存在を認識しつつも、自分の業界とは関係ないやと対岸の火事状態。
気付いた時にはもう遅い。
しかもアマゾンは手を緩めません。「Amazon Go」の登場です。
これまた業界に激震です。まじかと。これもう無人化待ったなしやんと痛烈に思い知らされます。
これに続けと中国ではアリババが「タオカフェ」でAmazon Go以上?と思わせる店舗を生み出しました。
日本ではJR東日本が導入した「スーパーワンダーレジ」や、ローソンとパナソニックのレジロボが登場してます。
しかし、お会計が早くなるレジだけではECに対抗するのは不可能です。
実店舗の強みはやはりディスプレイによる「非計画購買」の喚起です。
ロングテールもアマゾンには敵いません。
しかし、現在のECはあくまで顕在化されたニーズがある状態を満たすのみで、インターフェースもそれを意図しています。
それに対抗する小売店は、今まではPOPなどで非計画購買を促したり、陳列で工夫するものでした。
しかし、ディスプレイやスマホと連動した顧客データがあれば、自動でパーソナライズされた販促が可能です。
しかもタイミングはバッチリ。お肉を買えば、焼肉のタレの買い忘れを防げるのです。
家に帰ってからメールで送られてきてもうっとうしいだけです。
行動経済学の「ナッジ理論」
ここで大切なのは「ナッジ理論」
人の心を動かすためには、ヒトの心のツボを小さく刺激するだけで良い、というものです。
このノウハウは行動経済学によって更に研究が進んでいます。
有名なのが、便器に描かれたハエの絵です。
人は的が有ると狙いを定めるという本能の分析に基づいてます。
あの絵ひとつで便器の清掃費が8割も削減できたんですって。
コンビニの床にも足型を描いておくと、人は自然とそこに並ぶそうです。
パンの匂いを嗅がせたり、一番儲かる高さに陳列したりもナッジ理論。
必ず誘惑に負けて購入する人が出てきます。
行動経済学面白いなあ。
「リアル店舗の逆襲」を読んでやってみた
次は行動経済学だな
行動経済学とテクノロジーの融合ってヤバくない?とやっぱり皆さんも気付きました?
ですよね。こんな簡単?に人を思い通りに誘導出来るなんて。
これは勉強しない手はないです。
小売業だけでなくサービス業や営業職にも使えると思います。
近いうちに行動経済学の本を紹介しますね。
出版社 日経BP