なんで、その価格で売れちゃうの?

行動経済学でわかる値付けの科学「なんで、その価格で売れちゃうの?」

いくらが良いのかわからない…

自分で色んな物を作ったり、サービスを提供したりしてる人も多いと思います。

そこで必ず悩むのが「お値段いくらにしたら良いのか」問題です。

 

「売れないし、値段、下げよっか…」

これ、間違いなくますます売れなくなりますよ!

 

そんな悩みにはこの本がオススメです。

マーケティング戦略と行動経済学を学ぶことが出来ます。

どんなに頑張っても、価格戦略を間違うと儲かりません。

この本でどのように価格を考えるのが良いのか勉強しましょう!

アンカリング効果を使おう!

僕はミネラルウォーターをよく買います。

でも実は水質調査では、日本は水道水とミネラルウォーターはほぼ一緒です。

目隠しで飲んで、違いが分かる人はほぼいません。

 

でもそれを知ったところで、水道水を飲むでしょうか?

値段で言うと1000倍違うのに、それでもミネラルウォーターを買うでしょう。

 

経済的は「合理的に行動する」を前提にして考えられます。

しかし実際には人間は「合理的でない行動」ばかりします。

その不合理な行動を解き明かそうとするのが「行動経済学」です。

行動経済学を理解すれば、価格に対するお客さんの行動も理解できるようになります。

 

ミネラルウォーター問題は行動経済学でいう「アンカリング効果」です。

アンカリングとは船の錨を下ろす、という意味です。

「アンカリング効果」とは、人の心をある数字に繋ぎ止めるという現象です。

 

実験では、最初に数字のメモを見せてから、数字に関するクイズを出すと、最初に見た数字の大小に合わせて、答えも大小に変動することがわかりました。

「人は無意識に最初に見せられた数字に大きく影響される」

このアンカリング効果こそ、ミネラルウォーターを買う行動がやめられない理由です。

 

水道水は不味いといイメージ。でも水道水をペットボトルに入れると売れ出すのです。

 

100均で売ってる物も、お洒落な雑貨屋さんに置くと1,000円で売れます。

このように、お客さんはアンカリングを基準にして、商品の品質と価格を判断します。

アンカリングを上手く活かせば、高く売れるようになります。

 

では、アンカリングはどうすれば作れるのか?

「お客様に聞いてみよう」は絶対してはいけません。

 

世の中に無い新商品の場合、その価格が安いかどうかは、お客さんは判断できません。

こんな時に「いくらにしましょうか?」は愚の骨頂です。

必要なのは「アンカーを作る」ことです。

 

よく言われる「結婚指輪は給料の3ヶ月分」

これは高級宝石を扱う「デビアス」のマーケティングプロモーションによって作られた、結婚指輪の相場です。

このプロモーションが行われたのは30年前ですが、今でも相場として残っています。

 

アンカリングは「擦り込み」と同じです。

なぜ安売りすると安い価格でしか売れなくなるのでしょう。

 

人間は同じ金額でも、得する「お得感」よりも損する「損失感」の方を、より強く感じてしまいます。

なので一度安売りすると、元の値段では売れなくなります。

100円得より100円損の方が、同じ100円なのに重く感じるのです。

 

これを行動経済学では「プロスペクト理論」と言います。

安く売るのは間違いではありません。でもその際は「徹底的に安く」する必要があります。

 

価格を決める時には、このカラクリも考慮しておかないといけないんですね。

「バリュープロポジション戦略」で高い価値を提供しよう

値段は下げず、お客さんが納得する価格で、高く売ること。

これぞ価格戦略の王道です。

 

高く売るためのルールはシンプルです。

正しいお客さんを見極めて、お客さんが求めている事を理解する。

その上で高い価値を生み出す。

そして値頃感がある価格を決める。

これです。

 

僕はレトロゲームが好きなんで、そこから例を出しますね。

ファミコンディスクシステムのゲームに「アイアムアティーチャー」というソフトがあります。

 

画面を見ながらセーターの編み方が学べるという内容。

普通に考えて、当時のファミコンキッズ達がこれに食いつくはずがありません。

全く売れませんでした。

 

しかし、時代は進み、レトロゲームのコレクターたちが数多く現れるようになりました。

すると「アイアムアティーチャー」は20万円以上という価格で取り引きされるようになったのです。

市場に全く出回ってない希少性がコレクター心に火をつけたのです。

 

中身が同じものでも、その時の希少性で値段が変わります。

このように、商品を高く売るには、世の中に大勢いるお客さんの中で、その商品をほんとうに必要とするお客さんを見極めて、そのお客さんに「どうしても欲しい」と思う希少価値を提供する事です。

そしてそのターゲット以外はお客さんではありません。

アイアムアティーチャーも、コレクター以外の人には10円くらいの価値かも知れません。

 

なので、高く売る為のルールは、正しいターゲットのお客さんに、正しい価格で売ろう!なのです。

 

この「お客さんが必要として、ライバルが提供出来ない、自社だけの価値」を、マーケティングでは「バリュープロポジション」と言います。

 

自社の商品が提供する価値だけでは、お客さんは必ずしも買ってはくれません。

お客さんが求めている価値と重なっている事が必要です。

しかし、それだけでもダメです。

競合がその価値を提供出来ない場合に、お客さんは初めて希少性を感じ、高いお金を払おうと考えます。

 

ある居酒屋のお話。

高級なイベリコ豚の生ハムが食べれるお店をオープンしました。客単価は5000円です。

しかし上手くいきませんでした。

 

そこで「最高級イベリコ豚の価値が本当にわかるお客様に売ろう」とターゲットを絞ります。

更に売り上げが下がるかもしれない恐怖との戦いです。もう藁にもすがる想いです。

 

ターゲットはお客さんの中にいた「52歳の経営者。優越感に浸りたい、人に自慢したい。モテたいと思っている人」です。

この人が喜んでくれる事を、具体的にやろうと考えました。

 

まずは接客の際に高級イベリコ豚の説明をする。メニューは高級感のあるものに変更。

食器も入れ替えます。それまでやっていたクーポンは止めます。

ここで徐々に売り上げも上がってきました。

 

ここのタイミングで、店長さんは店舗改装に踏み切ります。

生ハムを丸々1本25万円でキープ出来る生ハムセラーや、隠れ家風の個室。

生ハムには大きな名前のプレートをつけて、目の前でスライスするサービスもしました。

 

これらが人気になり、さらにVIPルームも作ります。

外からは何屋かすらもわかりません。これも勿論あえてのことです。

 

そしてこの1本25万円の生ハムは、宣伝していません。「その人だけが知っている」という希少性が大きな価値になるからです。

このお店は「生ハムセラー」という新しい市場を生み出したと言えますね。

 

顧客から見ての価値が最大限になるように「減らすもの」「取り除くもの」「増やすもの」「創造するもの」の「4つのアクション」を明確にしていきます。

高く売る為の出発点は、常識に囚われずに顧客を具体的に徹底的に絞り込み、顧客が「欲しい」と思う高い価値を創造することなのです。

 

「でも、価格高くしたら、お客様が離れていくのが怖い…」

しかし、高くてもちゃんと価値を認めてくれて買うお客さんがいるなら問題ありません。

むしろ価格で離れるお客さんは本当のお客さんではないと言えます。

 

BtoBでの仕事でも、値段の安さで仕事を引き受けると、無理難題を言ってきたり、支払いを先延ばししてきたりします。

お客様は大切にすべきですが、神様ではありません。

値下げを要求してくるお客さんは、こちらから丁寧に断るべきなのです。

 

ここで大きなカギを握るのが価格です。価格に応じて、お客さんの質は変わります。

高い価格にすれば、ヤバイ客はほぼいなくなります。

 

「なんで、その価格で売れちゃうの?」を読んでやってみた

自分の商品の価格を考えてみた

いざ自分の商品の値付けをしようとすると、めちゃめちゃ迷います。

Tシャツ作ってるんですが、この値段がいまだに定まってません。

 

今は2980円なんですが、正直ちょっと安いよな…と思っております。

原価率で言えば儲けってほとんど無いんですよね。

 

でも「値頃感」で言えば2980円かなあって感じです。

値頃感とはお客さんが持つ「この商品は、このくらいの値段」という感覚です。

マーケティングでは「内的参照価格」と言います。

 

「いいけど、高い」は買ってくれません。

「高いけど、さすがやな」は買ってくれます。

いやー、値段は難しいね!

 

もう一回読み直して価格の勉強します!

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著書名 なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」 (PHP新書)

著者 永井 孝尚

出版社 PHP研究所