人生の勝算

これからは絆が価値を生む!SHOWROOM前田祐二さんの「人生の勝算」

波乱万丈の人生だからこそ絆を大切にしている

投げ銭システムが特徴の動画配信プラットフォーム「SHOWROOM」。

創業者である前田祐二さんは、メディアへの露出も多くご存知の方も多いでしょう。

以前紹介した2冊目の著書「メモの魔力」もベストセラーとなりました。

「メモの魔力」を読んでアイデアをガンガン大量生産!

 

前田さんがSHOWROOMを生み出す源流となった経験は、前田さんが8歳の頃まで遡ります。

前田さんは8歳の時にご両親を失くされてます。…もうこの時点で社長にまでなられた前田さんを尊敬する…。

 

自分の運命を変える為にお金を稼ぎたい。けど小学生なんでアルバイトにも雇ってもらえない。

色々試行錯誤した結果、親戚のお兄さんからもらったギターを手に、路上で弾き語りをしておひねりを貰うことになりました。

 

当時住んでいた葛飾区の路上で活動をスタート。最初は自分で考えたオリジナル曲を歌いました。

オリジナルの方が希少性があって価値が高くなると考えたのです。

しかし、結果は全然ダメでした。誰も止まってくれません。

 

なぜ止まってくれないんだろう?もっと上手くならないといけないのか?

逆の目線で考えるとどうでしょう。みすぼらし感じの小学生が路上で歌ってても「ちょっと怖いな」と思ってしまう。前田さんも立ち止まることはしない。

 

そこで作戦変更です。まずは歌う曲をオリジナルからカバー曲に変えました。

音楽という分野においては、未知のコンテンツより既知のコンテンツにこそ琴線が揺さぶられるのではないかという推測です。

めっちゃ考えれる小学生で感心する。

 

そこで当時流行っていた曲を練習して歌うことにしました。

すると、少しずつ立ち止まってくれる人が増え出しました。この辺りから仮説を立てて行動する楽しさを感じ始めたそうです。

 

でも次の課題がやってきます。お金を全然落としてくれないのです。

初月の売り上げは500円。厳しい…。

そこで立てた仮説は「葛飾区はイマイチお金を持ってる人が少ないのでは?」です。

そこでその500円を使って港区白金に移動します。いざとなればヒッチハイクで帰ろうと思ってたそうです。

 

まずは今まで歌ってた今流行りの曲を演奏します。が、葛飾区ほどには人は止まりません。

通りゆく人々をよく観察すると、人の雰囲気も違うことがわかります。

ハイソで身綺麗な大人の女性が多いのです。

 

そこで、今流行りの曲ではなく、往年のヒットソングにしようと思いました。

母親がカラオケで歌っていた松田聖子や美空ひばり、テレサ・テンなどの曲を練習して歌いました。

 

するとすぐに反応が変わります。多くのお客さんは「どうしてそんな古い曲を知ってるの?」と興味を持ってくれました。

ここから工夫を重ねて、月10万稼げるようになったそうです。すごい…。

一体どんな工夫をされたのでしょう?

 

「濃い常連客」を作ろう

最も重要なことは「濃い常連客」を作ることだったそうです。

その為には3ステップあります。

 

1ステップ目は、会話のキャッチボールが成立する距離までお客さんに入ってきてもらうこと。

遠巻きにはみてくれるけど、なかなか近寄って来てくれません。

 

前田さんの場合は、曲のセットリストの手書きボードを置くようになってから近寄って来てくれるようになったそうです。

ボードに松田聖子や吉幾三と書いてあると、「この子が吉幾三歌うの?」という疑問を持ってくれます。

通りがかった人が素通り出来ないような、つっこみ所を自分の中にどれだけ作るか

 

2ステップ目は、リクエストを受けることでした。

より密度の濃いやり取りを繰り返して、親近感を持ってもらう事が大切です。

自分の聴きたい曲を自分の為だけに歌ってくれる方がお客さんは嬉しいし、応援したくなります

 

そして、前田さんはお客さんとの絆を深める為に見事な工夫をされます。

「時間差でリクエストに応える」事です。

リクエストされた時によく知らない曲を無理して歌うのではなく、「知らないので今日は歌えません」と答えるのです。

そして、また次に来てもらう約束を取り付けます。

それには2つの理由があります。

 

まず一つ目は、そこでどんなに上手く曲を披露しても、大した価値にはならない事です。

どんなに上手くても、その価値は松田聖子本人のライブには到底およびません。

二つ目は、技術では勝てなくても、お客さんと心を通じ合わせる度合いでなら勝てるかもしれないという事です。

お金をもらう対価が「歌がうまい」ではなく「心が動いたから」という感情起因であれば、本人にも勝てる部分になるかもしれません。

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「今日は歌えないのですが、来週の同じ時間にもう一度来てもらえませんか?」

そう言って約束を取り付けます。

そして約束の時間に来てくれたお客さんに、1週間一生懸命練習した曲を披露するのです。

すると、前田さんが歌う曲がそのお客さんにとって特別なものになります。

 

それは「曲そのもの」ではなく、1週間という時間に思いを馳せ、過程自体に強いストーリー性を感じてくれるからです。

「私の為に1週間練習してきてくれたのか…。どこで曲をおぼえたのだろう?きっとお金も無いだろうに…」と、共感がそこに生まれるのです。

付随してお互いの身の上話をしたりして、お互いを一人の人間として認め合い、絆を作ります。

 

そして、ようやく3ステップです。ここで初めて仲良くなったお客さんにオリジナル曲を披露します。

すでに特別な絆が出来上がったお客さんは、詩もメロディも噛みしめ、その物語の成り立ちに感動してくれます。

一万円札を置いていってくれる人もいたそうです。

 

最初とその時とで何が違うのか。特別上手くなったわけではありません。

絆な深さが違うのです。

 

絆な深さにより生み出されるのが、「コミュニティ」と呼ばれる絆の集合体です。

コミュニティ形成は、これからのどんなビジネスにおいても、外す事の出来ない要素になります。

理由は2つあります。

コミュニティはなぜ必要なのか?

第一に、コミュニティには現代人が価値を感じる要素が詰まっているからです。

コンテンツの価値以上に、絆、すなわち心の結びつきや、裏側にあるストーリーに価値を感じ、消費するからです。

 

売り上げが、人がどれだけの価値を感じたかの指標とするならば、自らのビジネスの周辺にどれだけのコミュニティを形成出来るかは、そのままビジネスの成功に繋がります。

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第二に、コミュニティ作りの成功において、先天的な要素がほとんど関係ない事です。

コミュニティの成功に最も影響を与える要素は、後天的な努力の絶対量です。

これは限られた人に与えられた才能や特権ではありません。

正しい方法論で十分量のアクションを踏めば、誰もが良質な絆とコミュニティを生み出す事が出来ます。

 

そしてその結果、現代に沿ったスタイルでビジネスを加速する事が出来ます。

しかもこれは、アートやエンタメ分野だけでなく、あらゆるビジネスにおいて適用でき、価値を増幅させるのです。

 

この「後天的な努力によって、頑張った人が報われる」という世界観がSHOWROOMのビジョンに通じるのです。

 

「よなよなビール」で有名なビール製造メーカーの「ヤッホーブルーイング」も、コミュニティ形成でヒットを生み出した事で有名ですよね。

ヤッホーブルーイングのホームページ

ファンイベントを定期的に開催して、ファンとの交流を深めます。

よなよなエールのファンが集うキャンプなども行い、そこで商品企画について議論したりもします。

ここで重要なのが、「客から中の人へ」です。

 

AKBの常連ファンは、自分達がまるで運営側であるかのように、メンバーの誕生日イベントを企画して運営しています。

「常連客」を「中の人」に出来ると、コミュニティは一気に強固になります。

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コミュニティにおいて、余白を上手く演出して客とサービスの境目を不明確にしていく事が重要です。

西野さんの「えんとつ町のプペル」も10万人の共同作業によって作る事で大ヒットさせました。

 

「よなよなエール」もこの余白の存在や、客から中の人への原則が当てはまります。

本来はただビールを買って飲むだけだったお客さんが、運営の開催するイベントに参加し、運営の悩みを聞き、みんなで余白を埋める。

一度そうやって運営側にまわると、顧客として大ファンになっています。

 

おそらく、こうした顧客はビールの価格が上がっても、ファングッズを購入する様に買っていくでしょう。

もはや価格など関係ないほどのエンゲージメントが形成されます。

これがコミュニティの本質です。

 

「人生の勝算」を読んでやってみた

「ファン作り」を頑張ってみた

僕は奈良をモチーフにしたTシャツを作って販売しています。

一番最初に悩んだのは価格設定でした。

 

周りの人に「Tシャツっていくらで買う?」って聞いて調査して決めたのですが、これは大間違いでした。

みんなユニクロとかの感覚で値段を言ってきました。でもその価格は「Tシャツ」の値段だったのです。

 

そんな大企業の価格と張り合う事自体が間違いだったのですが、僕のTシャツを買ってくれた人のほとんどはストーリー性で買ってくれたと思います。

対面で、奈良に来た動機や行ってきたお店の話を聞く。

質問されたオススメのカフェを案内する。

アートに興味がある人が来た時には、どうやって描いてるとかそんな話で盛り上がります。

 

すると最後には一枚買って帰ってくれるのです。多分それは2000円でも3000円でも同じ事だったと思います。

それは高く売りたかったとかではなく、売り方を、価値の意味を間違っていたのです。

旅の思い出の1ページになる。その価値を提供する事に意味があったのです。

 

コミュニティと呼べる程のものは作れてませんが、応援してくれるという意味では同じだったと思います!

 

前田さんの幼少期から、外資系投資銀行で働いてた時、DeNAの南場さんとの出会い、SHOWROOMの起業と、めちゃめちゃ面白い話しが詰まった本です。

オススメですので、是非読んでみて下さいね。

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著書名 人生の勝算 (NewsPicks Book) (幻冬舎文庫)

著者 前田裕二

出版社 幻冬舎