ライフネット生命を起業した出口さんの著書です。
現在は大学を運営されており、その教養に溢れた言葉はこれからの人生の指針となります。
教養とは如何にして身に付けるのか。読書とはどのような意味のある行為なのか。出口さんの生き方から学びましょう
「本の使い方」本のムシ出口治明さんが1万冊を血肉にした本と向き合う方法
出口さんはやっぱりすげえぜ!と唸る一冊です
この本を読むと得られるもの
- 出口さんの本の読み方が学べます
- オススメの古典や現代の本を多く紹介されてます
- 出口さんの溢れる知性を体感できます
日本では、大学に入るまでは頑張って勉強しますが、そこからは勉強しなくてもやってこれました。
社会がそれを許してきたからです。
戦後の日本経済を引っ張ってきたのは製造業の工場モデルです。
工場モデルの下では、製品を出来るだけ多く生産する事が求められます。
その為には工場を出来るだけ長く稼働させる必要があります。
つまり、長時間労働が合理的になります。
「上長の言う事を聞いて、与えられた仕事を黙々とこなす人」
「従順で、我慢強くて、協調性の高い人」
こんな人たちが求められてきました。
しかし、現在製造業のGDPに占めるウエイトは約20%です。
それに代わってウエイトが増したのが、サービス産業です。
サービス業では、
「自分の頭で考えて行動し、新しいアイデアを生み出せる人」
が重宝されるようになりました。
「どうすれば、自分の頭で考える力が身につくの?」
出口さん曰く、「読書が最良の方法」です。
思考は料理と同じです。
最初はレシピ通りに作ります。
レシピに相当するのが「発想のパターン」や「考える型」です。
これがないと、考える力は高まりません。
先人の考える型や発想のパターンを知る事が出来るのが、読書です。
特に読み継がれる古典は重要です。
この本では、
- 「教養」と「教育」の違い
- 教育を得る為の効果的なツール
- とのジャンルを学んだらいいか
- リベラルアーツの必要性
- 本、新聞、インターネットの違い
- 本を読まない人が増えると、どんな影響があるのか
- 未知の分野の勉強の仕方
- どうして古典が難しく感じるか
- 古典を読む意義
- 古典の選び方
- 現代の本の選び方
- 図書館を活用する
- ラーニング・コモンズとして機能するAPUのライブラリー
- 本の薦め方
- 読書の作法
- 歴史書の読み方
- 速読より「熟読」
- ビジネス書との距離の取り方
- 数字・ファクト・ロジック
- 本に即効性を求めない
- 本の再読
- 考えるとは、言語化する事
- 目的別のお薦め本
- 本を「愛する」
の項目です書かれています。
ここでは、読書の有益性と古典のススメについて要約します。
かなり内容の濃い一冊です。是非とも読んでほしい一冊でした。
正しい教養の身につけ方
教養は、教育とは違います。
教育は、人間が生きていくうえで必要になる「最低限の武器」です。
教養とは、より良い生活を送るために、思考の材料となる情報を広く、かつある程度まで深く身につける事です。
ストックしてある知識や情報の量が多いほど、思考や直観など脳の活動の精度は高くなります。
だからたくさんの教養を身につけておく必要があるんです。
大切なのは、読書量よりも「精神のあり方」です。
ココ・シャネルは後年、
「私のように、年老いた、教育を受けていない、孤児院で育った無学な女でも、まだ一日にひとつぐらい花の名前を新しく覚えることはできる」
と言ってます。
まさに、教養とはこのような「ひとつでも多くの事を知りたい」という精神のあり方だと、出口さんは仰います。
島崎藤村は教養を身に付けるには「三智」が必要だと説いています。
「人の世に三智がある。
学んで得る智、人と交わって得る智、自らの体験によって得る智がある」
出口さんも、
- 人から学ぶ
- 本から学ぶ
- 旅から学ぶ
の3つ以外に身につける術はないとされています。
自分の周囲の世界を変えたければ、まずは世界を正しく理解することから始めなければいけません。
しかし、人は自分に都合の良いように世の中を見てしまうので、偏見を持ちやすい。
そこで、正しく理解する為には、
タテ思考/時間軸…人間、あるいは社会の歴史と照らし合わせて考えること→昔の人の話や、古典や社史などを読む
ヨコ思考/空間軸…世界の人々、あるいは他社などの状況を照らし合わせて考えること→他の国や他社の実績を調べたり、実際に行ってみること。即ち旅
人、本、旅からたてよこに展開していくと、ほとんどの事柄について、現在の自分のポジションをりかいてきるようになります。
人、本、旅の質が全て同レベルなら、最も影響力が高いのは旅です。
旅は五感の全てを使って味わう事が出来るからです。
次は人です。本は一番影響度が低いんです。
ですが、つまらない旅に行くくらいなら、むしろ優れた本の方が学びが大きいです。
効率面で言えば、本は最も効率良く共用が身に付きます。
古典を読もう
「古典を読んでわからなければ、自分がアホやと思いなさい。
現代の本を読んでわからなければ、書いた人間がアホやと思いなさい」
古典は時代背景が違うので、表現内容を正しく理解するのが難しいです。
現代の本がわからないとしたら、書いた人間がアホか、わざと難しい言葉を使って博識ぶってるだけなので、読むだけ時間の無駄です。
自分を高めるなら、ひたすら古典を読むべきなんです。
ビジネス書を10冊読むより、古典を1冊読んだ方が、はるかに得るものが大きいです。
優れた本というのは、そう滅多に世に出るものではありません。
古典が優れている理由としては、
- 時代を超えて残ったものは無条件に正しい
- 人間の基本的、普遍的な喜怒哀楽が学べる
- ケーススタディとして勉強になる
- 自分の頭で考える力を鍛錬できる
時代を超えて残ったものは無条件に正しい
古典は、基本的にマーケットに選ばれてしぶとく残ったものと言えます。
保守主義的に考えると、今も残ってるってことは、古典に書かれていることは良いことに違いないよねという結論になります。
昔の人も訳わからないことをたくさん述べてきたはず。
でも、市場の洗礼に耐えられず、消えていったと思われます。
今も残っているということは、確実に何かしらの意味があるはずです。
ということで「無条件に正しい」と仮定するのです。
人間の基本的、普遍的な喜怒哀楽が学べる
そして、人間が進化しているとするなら、それは脳の活動と技術的な進歩を混同しています。
進化しているのは脳ではなく、「技術」の方です。
トイレはトイレットペーパーからウォシュレットに進化しましたが、これはトイレが進化したのであって、脳が「もっとお尻を綺麗にしたい」と進化したわけではありません。
自然科学の分野は、技術の進化に伴って日々新しい発見があります。
132億光年先の銀河が撮影できるのは宇宙望遠鏡の進化の賜物であり、1京回の計算がわずか1秒で出来るのはスーパーコンピュータの進化によるものです。
でも、文学や音楽といった人文系の分野は、いつ天才が現れるかわかりません。
ベートーヴェンを超える交響曲はいまだに作られていないのです。
ストラディバリウスを超えるバイオリンも作られていません。
なぜかというと、人間の能力や脳の働きは1万3000年前から進化していないからです。
1万3000年という期間は、20万年のホモサピエンスの歴史の中では数パーセントの時間です。
その中で最高の天才が現れるかは完全にランダムなんです。
だから「たまたま370年ほど前に、最高のバイオリンを作れる天才が現れた」と考えれば繋がりますよね。
人間の喜怒哀楽は、ギリシャ悲劇の中に全て描かれています。
脳が同じなら、人間が思いつくことも同じようなものでしょう。
なので、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスを超える天才はそうそう現れないと考えることもできます。
たまたま3人の天才が同じようなタイミングで現れたと考えて下さい。
「そんな偶然あるかいな」が進化論の典型なのです。
ケーススタディとして勉強になる
優れた歴史書や小説に登場するいろんな人物は、生きた人間社会の最良のケーススタディになります。
人間の心理に深く踏み込んだ古典を読めば「ああ、人間の作る社会はこういうものなのね」と何度も予行練習ができます。
人間は厄介な存在です。嫌な奴は山ほどいます。
そんな時も「あの時に読んだ本と同じやっちゃ」と客観的に捉えて、自分を落ち着かせることも出来ます。
予期せぬ相手が現れても、心配ありません。
「あ!こいつ本に書いてあったヤバい奴と同じやん」と軽くスルーすることもできるんです。
古典を読めば人間と人間社会に対する認識を簡単に得る事ができます。
一から考えなくても、まさに「巨人の肩に乗って」先人が積み重ねた教養をありがたく使わせてもらいましょう。
自分の頭で考える力を鍛錬できる
「自分の頭で考える」ことこそ人間の本質的な価値です。
しかし、自分の頭で考えることもひとつの技術なので、簡単には身につきません。
スキーは滑りやすい斜面を、滑りやすい板に、滑りやすいワックスを塗って滑り落ちるスポーツです。
放っておいても滑り落ちるのに、それでも訓練しないと上手く滑れるようにはなりません。
それほどに人間は不器用でアホな生物なのです。
スキーと同じで、人間の脳も「自分で考えるとは、こういうことだよ」と教えてもらわないと考える力を身に付けることは出来ません。
そして、それを教えてくれるのが古典なのです。
出口さんが学生に「国富論」を薦めても、「読んだことはないけど知ってるよ。だからいいです」という学生が多いんだそうです。
出口さんが国富論を薦めるのは、国富論の概要を知って欲しいからではありません。
アダム・スミスが「どのように自分の頭で考えて市場経済の原理を見つけ出したのか」という点に目を向けて「なるほど、物事はこうやって考えるのだな」というアダム・スミスの思考過程を追体験して欲しいからなんです。
哲学者の木田元さんが仰られるように「きちんと書かれたテキスト(古典)を一言一句丁寧に読み込んで、著者の思考のプロセスを追体験することによってしか人間の思考力は養えない」のです。
「本の使い方」を読んでやってみた
そろそろ僕も古典を読んでみようか…
実践してみたこと
- 古典を読んでみた
なるほど、古典を読むことはそんなに有意義なんですね。
いや、でも僕も例に漏れず古典が苦手なのです。先述の通り僕もアホなんです。
古典ってめっちゃ難しいですよね。
でも、これだけ毎日本を読んできたんだ、そろそろ俺でもいけるんちゃうか…?
そう思えてきたのも事実です。
古典ってどうやって選べばいいのでしょう?
出口さんのオススメの本の選び方は、
- 書店や図書館で、薄い古典を「10冊」ほどピックアップする
- タイトルを眺めて、気になる作品を2〜3冊選ぶ
- 読んでみて面白ければ、そのジャンルを広げる
僕は以前古本屋で働いてたのでわかるのですが、これは岩波文庫のことですね…。
めっちゃ難しそうなタイトルばかりで感心してました。
好きな人はホント好きで、ごそっとまとめ買いされますもんね。
「PSYCHO-PASS」の槙島聖護(まきしま しょうご)が憧れです。
あんな感じのインテリになりたい。厨二。
とりあえず槙島先生のおすすめから読んでみます!
さすが出口さんでした。
とにかく機知に富んだ一冊でした。本を読んで出口さんのような人物になりたいです。
読書に少しでも興味がある方なら是非読んでほしい一冊ですね。名著です。
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著者 出口治明
出版社 KADOKAWA