
ギネスこち亀の秘密「秋本治の仕事術」どうして40年休まず連載出来たのか?
あの密度の濃い漫画がいかにして生まれたのか
この本を読むと得られるもの
何かをやり続けるには何が必要なのかわかります。
仕事における幸せとは何かが発見出来ます。
集中力の維持の仕方がわかります。
やっぱりと言いますか、秋本先生は仕事を苦痛だと思ったことは一度もないそうです。
と言っても「好きなことを仕事にしなさい」が簡単でないのもわかってらっしゃいます。
ただ自分はラッキーだったとも仰ってます。
そんな秋本先生も、ただ一つ言えるとしたら
「とにかく好きで好きでしょうがない」と思えることを見つけるべきだ
ということなんですって。
それが仕事にできればラッキー。そうでなくても好きなことを自分の核にできていれば、心は安定するものです。
仕事が楽しくないという人が、「じゃあ好きなことは何?」と聞かれても答えられないようでは八方塞がりです。
映画でもゲームでもなんでもいいので、今からでも遅くないので、何かひとつ自分の「好き」を見つける作業をするのがいいかもです。
秋本先生は小さい頃より車が好きでしたが、車のデザイナーになるのは難しくて諦められました。
そして同じくらい好きだったアニメーションの世界に標準を合わせて就職。
そこから漫画家デビューした後も、苦しかった記憶はほとんどありません。
心から好きで興味がある世界に飛び込んだのが大正解だったんですね。
この本では、
セルフマネジメント術
時間術
コミュニケーション術
発想術
健康術
未来術
描き下ろし「両津勘吉の仕事術」
という視点で秋本先生の仕事のやり方について解説されてます。
どうでもいい事ですが、両津勘吉が一発で変換できたことにこち亀の偉大さを再認識しました。
ここでは、個人的に気になる時間術、発想術について要約します。
先生の穏やかな語り口に癒されながら是非本を読んでみて下さいね。
秋本先生の仕事に対する取り組み方。両さんとは真逆です
とにかくこの本は読んでて驚きの連続です。
秋本先生は連載中にネタが思いつかなかった事は一度もないそうです。
あんなに毎週色んな話題を扱ってて、思い付かなかった事ないんや…。
秋本先生は多分「鈍感」なんだと自分で仰ってます。
別にポジティブでもなく、鈍感。だからどんな事が起きてもあまり深く考えず、悩まないんです。
漫画家なんてリスキーな仕事、深く考える人だったらまず選ばないんだそう。
だからこそ楽しく仕事をされてたんですね。
秋本先生がこち亀の連載を開始した時は、ハードボイルドなタッチを特徴とする漫画=劇画が生まれ、漫画界に劇画ブームが巻き起こった時です。
さいとうたかお先生が確か火付け役だったはず。
秋本先生も大きな影響を受けました。
なんで最初の頃のこち亀はハードボイルドタッチだったのですよ。
僕も1巻を読んだ時は、連載時とのギャップにびっくりしました。
当時の少年誌はまだトキワ荘からの流れを組むほのぼのタッチが中心でした。
なのでこち亀は劇画風味のギャグ漫画という斬新なマンガだったので、反響が大きかったのです。
でも、そんなテイストでは先が見えなくて長く続きません。
そんな時に担当編集者さんが「下町をテーマに描いてはどうか?」という提案があったのです。
そんな日常的な話でいいの?と半信半疑で浅草のことやベーゴマのことを描いてみると好反応!
逆に下町の風景が珍しくウケたみたいです。
そこからこち亀は大きく方向転換します。
それ以降も秋本先生が好きなサバゲーやゲーム、デジタル機器などなんでもテーマに取り入れて内容を変化させていきました。
もし秋本先生が初期設定にこだわり、人の意見にも耳を傾けなかったら絶対こんなに連載できなかったでしょう。
変化を恐れないこと。
これは全ての仕事で言えることです。
まさに「チーズはどこに消えた?」ですね。
先生が幸せを感じる瞬間は作品が1本完成した時です。
描き終えて1ページずつチェックして、紙をトントンと揃えた時が至福の時なんですって。
先生かわいいな。
そして次も頑張ろうっていう気力も湧いてくるんです。
一番大きな快感を覚えた回が「希望の煙突」という話です。(141巻)
1年かけて取材をし、思い通りのものに仕上がって、読者からも大きな反響がありました。
先生はデータで送らず、手渡しで担当者さんに渡すのが好きです。
「お疲れ様でした」の一言で、本当に報われた気持ちになります。
その時の開放感を満喫した後、次のネームに取り掛かるんですって。
まさに永久機関ですね…!
集中力が切れるのは一仕事終えた時。
それが怖くて先生は大きな仕事が終わった次の日でもすぐに次の仕事に取り掛かります。
何事もなかったように変化なくずっと続けるのが、集中力を持続させるコツなんですって。
漫画の世界は結果だけがモノを言います。
いくら頑張って描いても、面白くなかったらその努力は全くの無駄です。
だから秋本先生も人に簡単に漫画家を勧めません。
本人がいくら努力してもダメなモノはダメな時があるんです。残酷だけど、そうなんやな…。
実りがないのに頑張るのは無駄であるのは他の仕事でも同じです。
意固地になっても必ず報われるとは限りません。
だからとっとと見切りをつけて次に移るぐらいのタフさが、人生には必要なんです。
才能がある人も、それを活かすためには他人の声にしっかりと耳を傾けるべきです。
自分の才能は本人が一番よくわかっていないことも多いからです。
自分の才能を伸ばしたいなら、誰かに何かを言われるのを嫌がらず、人の意見を素直に受け入れ、柔軟に対応する心が大切です。
しかし、大きな決断は人に相談せず、自分で下すべし、とも仰ってます。
こち亀を終了する時も誰にも相談しなかったそうです。
自問自答を繰り返した結果でした。
連載40年の秋本治さんの時間術。どうやって週刊連載を続けてたの?
秋本先生の時間術は
「自分から積極的に時間を生み出さないといけない」
です。
週刊誌は当然ながら恐ろしいことに、毎週締め切りがやってきます。
しかし、秋本先生は締め切りが恐ろしいと思った事がないそうです。
…先生、ほんまの鈍感なん?
もちろん、普通に締め切りに合わせて仕事をしていると、ハードな週刊連載の中ではいつまで経っても時間的な余裕を手に入れることはできません。
こち亀連載中も読み切りも描きたかったので、時間を作る方法を考えたんですって。
ほんま漫画描くのが好きなんですね。
そしてその為にこち亀を週7日かけて描くのではなく、5日で仕上げるペースを作りました。
そのやり方のおかげで週刊連載の方も作品のストックができて、時間と共に気持ちにも余裕が生まれたのです。
実は、このブログも秋本先生の思考を取り入れてます。
以前に秋本先生は連載しながらもストックを貯めていると聞いた事があったんです。
このブログは大体1週間分のストックが極力あるように書いています。
だから突然入院した時も、葬式があった時も毎日更新が欠かさず出来ています。
こち亀ではたまにめっちゃ凝った話が登場します。
そんな話は1週間以上かけて描かれてるんです。
それもストックがあるおかげですよね。
もちろんストックがない描き方も、ライブ感があって迫力のある作品になるのも確かです。
その時々の読者の反応にも応える事ができますもんね。
秋本先生は単純に無駄な時間を省いていって、時間の節約をされています。
それはある町工場での仕事を紹介する映像を観たのがきっかけでした。
工具を出すのに1日トータル10分かかってるとすると、100人の工場だと1000分も無駄にしていることになります。
そのことに気付いた工場長は、工具箱を無くしてしまい、工具は全て壁に取り付けたそうです。
秋本先生もこのような考えを作業に取り入れました。
創作活動では無駄な時間も大切、と言われたりしましたが、先生にとっては無駄は無駄でしかなかったのです。
時間を切り詰めるコツは、とにかくスケジュールを自分で決めることに尽きるそうです。
人任せにしていると「次はどうする?」といつも時間の事が気になってしまいます。
それよりもしっかり自分で管理する方が精神衛生上も良いんです。
勤務時間は9時から19時と定めています。こんな漫画家珍しくない?
社員はきちんと休みを取り、タイムカードで時間管理もしています。
もちろん先生も最初は明け方まで描いていました。
そして9時からまたスタートするので、睡眠時間はかなり短いですよね。
流石にこれは良くないと思い、24時、22時と徐々に終わる時間を早めて、19時上がりまで達成できたのです。
不思議と、終わりの時間を繰り上げても、できる仕事の量は変わりませんでした。
「5時までに仕上げようかな」という気持ちを切り替え、時間を短くしても、自ずと仕事のスピードは速めていけます。
マラソン選手と同じような感じで、先生もアシスタントさんも徐々にスピードを上げていったんですって。
元々先生は寝るのがもったいないと思うほどの性格です。
休みの日に昼まで寝るなんて考えられない。すぐに起きて活動したい人なんです。
先生はスケジュール管理を集英社の社員手帳でされてます。
当時担当だった集英社社長にもらったのがきっかけです。
3ヶ月分のスケジュール表を自作し、作品ごとに予定を書き込んでいきます。
ネームも作品ごとに4冊。
このスケジュール管理の徹底ぶりはまさに「秒単位で働く男」中川の親父ですね。
先生は作品を描きながらアウトプットして、同時にラジオでインプットされてます。
そんな器用なことできるの?!
描きながらラジオからネタを拾うそうです。
徹底的に時間の効率化を求めた結果なんですね。
「秋本治の仕事術」を読んでやってみた
おっとりとズバズバ言ってくれるので反省しきり
実践してみた3つのこと
- 好きで選んだ道ならば覚悟を決めて愚痴らない
- 部下を信頼して気持ちよく仕事をする
- 取材は何よりも重要な情報源
好きで選んだ道ならば覚悟を決めて愚痴らない
先生は「時間がない」という愚痴すらも言わないそうです。
かっこいいぜ。
昼までダラダラ寝て、それで愚痴っててもどんどん辛くなるだけです。
好きで選んだ道なんだから、楽しくやっていこう!
僕も愚痴りません!多分…いや、頑張ります!
部下を信頼して気持ちよく仕事をする
秋本先生はアシスタントに対して、厳しい態度で接することはまずありません。
ベースには「漫画とは本来一人で作るもの」という考えがあるからです。
もちろん厳しいのが正解という人もいると思います。
でも僕もどっちかと言えば、厳しくするの嫌いというかそんな関係が面倒って思ってしまう方なので、ちょっとホッとしました。
上司からもっと部下にきっちり接しろと言われたりしてたんですよね。
褒めて感謝することで、自分の仕事も気持ちよく進むんだと教わりました。
取材は何よりも重要な情報源
ネットで情報はなんでも手に入りますが、人から直接聞く生の声はやっぱり大切なんだそうです。
週刊連載の中でも先生は極力自分自身で取材に行かれてました。
アイデアが思い立ったら即アポを取ります。
同時に何件にもアポを入れます。
取材すると必ず想定外のことも発見するし、そこから次の作品にも繋がったりします。
僕は奈良町の情報をブログで発信していたのですが、正直取材が大変でちょっと嫌になってました。
行けば楽しいのですが、どうにも腰が重たくなるんですよね。
でも、この秋本先生の行動力を読んで、やっぱり外に出て人から話を聞くのは大切だなと再認識しました。
取材頑張ろうって思えました。
ありがとう、秋本先生。
ほんと両さんと真逆の性格の先生でした。どうやってあのキャラクターを生み出せたのか不思議なくらいです。
非常に丁寧な語り口で、それでいてビシッと言うことは言う内容で面白かったです。
是非本で先生の仕事術を学んでみて下さいね。
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天才とはこういう努力の集中力が半端ない人のことをいうんでしょうね。
著書名 秋本治の仕事術 ~『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由~
著者 秋本治
出版社 集英社
